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「御真影」下付

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 「御真影」、すなわち天皇と皇后の写真が明治六年十二月開拓使に下付され、翌年からは官員をはじめ一般庶民にいたるまで拝覧する儀式として定着していったことは第五編九章で述べた。
 二十年代に入って「御真影」は各学校、各村役場、各支庁といったレベルにまで下付されるようになり、拝賀式が生活のなかの重要な儀式として位置づけられていった。二十年以降の「御真影」下付とそれにともなう状況を当時の新聞等から拾いあげたのが次の表15である。
表-15 「御真影」下付状況
年月日下付先状 況
 22・ 6・14北海道尋常師範学校体操場にて拝戴式。国旗、玉座、金剛石の唱歌、校長告辞朗読。
 26・ 6・20日赤北海道支部聖影奉戴。以後毎年新年に奉拝式。
      12・11札幌外九郡内公立小学校札幌区役所に奉迎。札幌外九郡役所管轄部内各公立学校へ下付すべき三〇余通。
      12・16豊水小学校聖影奉迎式執行。
      12・18豊平ほか各小学校豊平小学校聖影校内へ奉迎。白石、平岸、月寒、広島の諸学校へ下付の聖影、豊平小学校を行在所とす。藤古小学校拝戴式。
      12・26 札幌外九郡長林悦郎、「御聖影並に勅語謄本奉衛方心得」を編成、部内各戸長役場、町村公私立各小学校へ配布。
 27・  1・  1各小学校等拝賀式。
        1・ 6付 豊平村の阿部仁太郎、豊平小学校に自費をもって石造奉置所建築寄付を出願。
 28・ 2・11苗穂小学校紀元節をもって石造奉置所落成式挙行。
        3・18札幌郵便電信局下付につき局員一同停車場まで奉迎。同局奉迎式。
        4・17札幌農学校佐藤農学校長職員一同、停車場まで奉迎。十一月一日奉迎式。
      12・15月寒村尋常小学校煉瓦石造奉置所落成につき奉遷式。
 29・10・11白石尋常小学校落成式並聖影奉戴式挙行。君が代、勅語奉読。
      11・ 3札幌女子尋常高等小学校新築中のところ、聖影奉置所落成につき奉遷式。
 30・ 1・22憲兵隊本部・
独立歩工砲兵三隊
第七師団司令部に到着。
       2・20札幌創成尋常小学校二十九年十一月札幌創成高等小学校新築移転にともない、尋常小学校聖影奉戴式。
      10・ 9札幌創成尋常小学校煉瓦石造奉置所落成につき奉遷式。
      10・17琴似尋常高等小学校奉遷式。これを機会に記念祭。余興として角力、手踊、餅撒き、数千人の参加。
 32・ 6・13北海道庁各支庁園田長官、御真影供奉して帰庁。各支庁奉置所至急建築、下付の予定(釧路支庁部内各人民寄付金をもって奉置所新築計画と)。
      12・25札幌女子尋常小学校尋常小学校と高等小学校独立につき奉迎式。

 「御真影」はこのように北海道尋常師範学校を皮切りに、日赤道支部、公立小学校、郵便電信局札幌農学校、憲兵隊本部、各支庁へと下付されていった。それも下付を受けられたのは、宮内省に願書を提出して「拝受」されたものに限られていた。下付先では、このように特別の奉置所を建造し、それも一般庶民の寄付によって賄われる場合も少なくなかった。こうして「御真影」は、新年の拝賀式からはじまって年何回となく主に学校教育の重要な儀式として定着し、やがて一般庶民に浸透していった(第五章二節参照)。