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札幌製糸場等

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 三十二年三月段階で北海道製麻会社をはじめ札幌区内では、表19の工場が操業していた。この表によっても製麻会社が最大の職工数を抱えているのがわかる。
表-19 札幌区・村所在工場職工数一覧(明治31年末現在)
工場名所在地持主創立職工数製造品
札幌木挽場北1東4笹原文平22・ 110人木製品
器械製造所大通東4柴田勝26・1276農具、機械
札幌製糸所北1東3足立民治今井藤七20・10437人生糸、真綿
安田製糸所北1東3安田徳治23・ 7322生糸
共成(株)精米所大通東2共成(株)28・ 516精米
札幌麦酒(株)北2東4札幌麦酒(株)21・ 16133札幌麦酒、黒酒
札幌電灯(株)大通西3札幌電灯(株)29・1113電気営業
札幌酒造(合)南3東5札幌酒造(合)30・ 930精酒類
岩井製靴所南1西2岩井信六11・ 113靴製造
北門活版所大通西4中野二郎24・ 4337活版印刷業
山藤活版所南2西6山藤敬助27・ 9293活版印刷、諸帳簿製本
札幌活版所大通西3阿部宇之八19・ 5588印刷及製本
鈴木煉瓦製造場白石村87鈴木豊三郎17・ 725煉瓦石、屋根瓦、土管、その他土類焼物
門谷煉瓦場白石村76門谷吉太郎23・ 1149煉瓦石
北海道製麻(株)北7東1北海道製麻(株)20・ 5281526亜麻大麻製織物及糸類各種
雁来製線所雁来村北海道製麻(株)22・1160亜麻大麻繊維
合計1371人726645
北海道毎日新聞』明治32年3月24日付より作成。

 ところで、開拓使以来保護奨励されてきた札幌製糸場は、二十一年民間(足立民治今井藤七安田徳治)に払下げられたが製麻会社ほどの進展はみられない。それでも座繰・器械製糸工女、製綿工女を繭生産高に応じて雇い入れていた。日給は三十二年中で三〇銭より二〇銭で、製麻女工の最低賃金一六銭よりはまだ上である。札幌の製糸業は、北海道庁設置以後農家に対しては上繭製造の指導を主体とし、繭段階で本州大手製糸業片倉組などによる買付が行われ、地元札幌での製糸量は微々たるものになっていたようである。
 一方、札幌麦酒会社では三十二年段階で男六一人、女三二人が働いていた。労働時間は、五月から八月が一日一二時間、十一月から二月が一日九時間というごとく季節によって異なっていた。賃金は、男は月給制で一七円より六円五〇銭、女は日給制で五〇銭より一三銭となっていた。
 なお、当時一般の賃金は表20のごとくであった。これは、三十二年三月と九月における札幌区役所管内の賃金調査によるものである。月給でもっとも高い職種は、木挽職、指物師、経師職の二〇円、次いで農作(業)年雇男で一一円、畳職一〇円の順で、逆にもっとも低いのが下女の四円五〇銭であった。また日給では、石工の八五銭がもっとも高く、洋服仕立七五銭、建具職七〇銭の順で、逆にもっとも低いのは農作(業)日雇女で二五銭であった。石工は、石造倉庫や家屋の需要に従って賃金が高騰したものであろう。習熟度や仕事の需要に応じて賃金が上下している。
表-20 札幌区役所管内労働者賃金表(明治32年)
職業種類給料
区別
3月9月
農作月雇月男11円00銭9円00銭6円00銭10円00銭10円00銭5円00銭
月女6.005.004.005.004.003.00
農作日雇日男 45 40 35 45 40 35
日女 25 20 18 30 29 20
養蚕日男 40 35 30 35 30 28
日女 22 20 18 20 18 15
蚕糸繰日女 30 25 20 30 28 25
機織日男 50 45 40 50 40 30
日女 35 30 25 35 30 22
陶器轆轤 50 45 40 45 40 35
漆器塗師 60 55 50 55 50 45
飾師 50 45 40 45 40 35
袋物職 40 35 30 35 30 25
染物職8.006.004.008.006.004.00
和服仕立 55 50 45 50 45 40
洋服仕立 75 70 60 70 65 60
木挽職20.0015.0012.0016.0013.0010.00
大工 75 70 60 70 65 55
左官 50 45 40 70 60 50
瓦葺 50 40 35 60 50 40
屋根職 50 40 35 50 40 35
煉瓦職 65 50 40 50 40 30
指物師20.0015.0012.0018.0013.0010.00
経師職20.0015.0012.0019.0014.0011.00
畳職10.009.007.009.007.006.00
建具職 70 60 50 70 60 50
石工 85 80 75 80 75 70
植木職 60 50 40 60 50 40
煙草刻職 45 40 35 40 35 30
菓子製造 45 40 30 45 40 30
下駄職 55 50 45 55 45 40
靴職 70 65 60 65 60 55
馬具師 65 60 55 60 55 50
車製造職 65 60 55 60 55 50
鋳物職 50 45 40 50 45 40
鍛冶職 55 50 45 50 45 40
綿打職 50 45 40 50 45 40
活版植字 60 50 40 60 50 40
版摺職 50 40 30 50 40 30
桶職 65 60 55 60 55 50
酒造稼人 45 40 30 45 40 30
醤油造稼人 45 40 30 45 40 30
杭夫 70 60 50 70 60 50
日雇人夫 45 40 35 45 40 35
下男7.006.005.007.006.005.00
下女4.504.003.504.504.003.50
1.月=月給、日=日給。2.『北海道毎日新聞』明治32年10月16日より作成。