これによれば、蝦夷地(場所)往返の船は、すべて断宿で御判願、船改をし、場所生産物の積取船が入港した時は、御口銭(沖ノ口口銭-2分)、口銭(問屋口銭-2分)を断宿が受取ること、また場所で買付けた荷物を当地で売払う場所でも、御口銭、口銭は断宿が受取り、更に場所断宿でも船宿でもない問屋(これを脇宿という)が、請負人と売買契約をしても、断宿で御判願・船改をした上、御口銭、口銭は断宿に支払うことになっている。更に場所産物の売買には直接タッチせず、単に産物の輸送に従事した場合でも、運賃の3分を片金として船宿に支払うというものである。つまり場所生産物の売買に当っては、断宿が直接介入しなくとも、断宿は沖ノ口口銭および問屋口銭を自動的に収得し得る独占権を所有していたことになる。従って、断宿の得る問屋口銭は、売買過程で、取引の相手となる船手(多くは北前船)の船宿になっている問屋が収得する一般的な問屋利潤とは異なるもので、断宿となった問屋の独占利潤であった。だから北前船などが、箱館に来て場所請負人と取引し、その場所に産物を積取りに行った時には、結局、断宿に入御口銭(箱館港への入港関税)2分と、断宿口銭2分の計4分、更に自分の船宿である問屋に出御口銭(出港関税)2分と、問屋口銭2分の計4分とで、総計8分の口銭を支払わなければならなかった。