表6-20 主要輸出品
年 次 | 総 額 | 鮑 | 鯣 | その他海産物 | 硫 黄 | そ の 他 | |||||||||||
数量 | 金額 | 数量 | 金額 | 数量 | 金額 | 数量 | 金額 | 数量 | 金額 | 数量 | 金額 | 数量 | 金額 | 数量 | 金額 | ||
明治 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 | 425,997 400,774 434,053 338,946 437,537 265,089 395,997 473,835 483,047 722,299 692,524 749,262 843,628 508,088 436,750 378,913 684,898 673,548 | 7,939,691 7,195,594 9,868,154 7,113,044 13,186,691 11,998,441 11,355,107 16,383,723 15,769,580 19,616,994 20,956,618 20,938,739 24,621,821 19,535,110 15,686,939 14,082,890 19,891,505 23,462,010 | 308,387 265,134 324,798 156,487 245,911 143,342 225,877 323,664 318,145 440,590 526,248 523,007 605,633 348,321 204,078 263,804 455,169 448,003 | 164,931 99,982 136,626 222,152 498,769 285,323 523,635 252,384 491,397 566,600 584,300 741,800 930,950 820,750 767,450 612,450 540,450 792,105 | 11,171 6,082 7,279 8,220 13,616 8,844 15,995 6,767 18,179 20,170 24,301 38,789 39,447 28,641 25,486 20,333 17,071 23,990 | 91,713 81,364 58,698 188,827 205,681 155,102 146,677 195,266 155,414 176,086 137,367 187,862 232,202 233,748 250,117 157,026 218,576 228,573 | 37,052 42,936 29,108 94,414 107,049 66,301 71,550 83,370 59,447 65,868 58,329 106,659 141,097 101,977 77,786 38,817 70,687 74,147 | 177,093 121,525 134,403 153,282 163,010 85,735 160,498 41,567 75,622 107,628 47,878 7,026 6,654 3,779 2,009 1,086 1,484 6,258 | 37,053 44,713 50,752 38,320 39,401 18,813 41,403 10,420 20,722 29,810 14,450 2,234 1,996 755 757 261 415 1,364 | 108,706 159,738 138,680 288,498 127,188 115,568 181,474 94,396 264,762 237,189 307,292 377,937 196,425 161,485 430,829 170,430 335,254 506,714 | 16,643 18,926 15,817 28,850 12,377 9,950 21,429 7,018 30,868 26,639 51,227 54,583 24,491 19,483 38,956 14,675 35,704 43,550 | … … … … … … … … … … … … … … … … … … | 5,330 13,934 775 3,584 3,989 957 1,400 19,841 11,256 108,735 10,053 4,088 18,221 2,225 853 256 215 677 | 4,000 214,705 796,173 1,111,929 676,08 1,042,322 201,413 1,158,054 545,012 600 6,912,049 2,641,523 8,373,531 5,703,152 | 48 2,147 11,441 13,759 8,930 16,414 2,417 12,949 5,341 6 78,243 25,057 86,584 43,550 | … … … … … … … … … … … … … … … … … … | 10,313 9,049 5,524 6,924 3,753 3,123 9,413 6,341 22,013 17,538 2,575 19,896 12,743 6,686 10,591 15,710 19,053 38,267 |
『函館市史』統計史料編より作成.
刻昆布は開港以前の嘉永年間から函館で製造されていた。明治の初年代は数量の増減を繰り返しているが、10年代に入ると輸出量は増加するが、3県期には減少している。刻昆布は横浜、神戸、大阪でも製造されたが函館産は品質が良好であり清国市場では歓迎された。
長崎俵物 左から、煎海鼠、、鱶鰭、干鮑 中華会館提供
昆布類に次いで多い品目は干鮑、煎海鼠、干鯣の3品で、これらはかつて「長崎俵物」と称されていたものである。煎海鼠の産地は全道各地に分布しているが生産額は増進しないで、また年による商況には大きく変動があった。干鮑は渡島地方から日本海側に産出し、増毛と小樽産が上等品とされた。道内の生産量は増加しているのであるが輸出量は反対に減少傾向を示している。12年の函館大火により広業商会の所持していた10万斤余の干鮑を焼失したこともあったが、その翌年から急激に減少していった。干鮑の需要地は香港を中心とする広東省とその近隣地域であったが、従来は函館から上海へ輸出し、上海から香港方面に分輸していた。ところが横浜の清商が高額で買取るようになり、まずは国内移出品として横浜に送られ同港から香港に輸出されるようになった(『イギリス領事報告』国立国会図書館蔵)。また、こうした事情の変化を函館から香港への航路が不便であったからであるとする説もある(『北海道漁業志稿』)。鯣は渡島産が主で、後志産がこれに次いでいる。また青森産のものが混在して輸出されている。輸出は増加しているが、品質は九州産のほうが輸出品として優れていた。鯣の用途は上海から長江一帯にかけた民衆の常用食であった。これらの清国向け商品は函館から上海に輸出され、上海から清国各地へと転輸された。
海産物以外のものとしてはまず硫黄があげられる。産地は恵山、古武井、岩内、釧路、斜里、国後等であった。輸出先は大半がアメリカであるが、時には清国に輸出される場合もあった。硫黄は幕末に輸出した実績はあるが、それはわずか2年間にとどまっているのに対してこの時期はほぼ連年輸出されており、特に3県期には道内の硫黄生産の増加を背景として輸出量、金額も顕著な増加傾向をみせ、明治後期には主要輸出品の一角を占めるようになる。16年の『イギリス領事報告』では次のように述べられている。
硫黄は全てがサンフランシスコに積み出されているが、品質はそれ以前の輸出品と比較してはるかに良質であり、主として国後産のものであった。当時の硫黄は釧路、斜里産のものが北海道ではもっとも良質の製品であり、国後産はそれよりは劣っていたと述べて、さらに翌十七年に関してはニューヨークに向けて一度直輸されただけであり、従って輸出量は低下した。その原因として国際価格が低下していたにもかかわらず本道産のものは非常に高く、シシリー産のものと競争することは不可能であろう。 |
この当時イタリアが硫黄の最大産地国であった。18年はメルボルン、ニューヨーク、サンフランシスコに、19年はニューヨーク、サンフランシスコに輸出された。用途としては主に製紙、硫酸製造、漂白剤等の工業用に利用された。ちなみに明治12年度「函館商況」(『函館市史』史料編第2巻)ではこの硫黄輸出に触れて「将来輸出品ノ重要タルコト疑ヲ容レズト雖ドモ、未ダ販路ヲ拡張スル能ハズ、只米国桑港(編注・サンフランシスコ)ニ輸送スルモノノミ。而レドモ数千里ノ海上ヲ運送スルガ故ニ、大ニ元価ヲ廉ニセザレバ輸出ヲ盛大ニスルニ至ラザル可シ」と述べて将来有望な輸出品となることを見通している。この商品は函館在留のイギリス商人が主に扱ったようである(『勧商局雑報』)。
その他の輸出品としては鹿角が連年、毛皮が6年以降は毎年、石炭が若干の年に輸出されている。石炭は19年に輸出額が伸びている。幌内炭鉱の製品が小樽を経由して函館に移入されたものが、函館入港の軍艦と外国汽船に売られたものである。鹿角も幕末から薬用として清国向けとして輸出されているが、乱獲によって、この時代の末期は絶滅に近い状況を呈して輸出が激減少した。
表6-21 外国商船による輸・移出入価額
年 次 | 海 外 | 国 内 | 総 計 | ||||||
輪出 | 輸入 | 計 | 移出 | 移入 | 計 | 出 | 入 | 計 | |
明治 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 | 360 263 87 292 234 550 281 351 777 442 689 693 749 844 | 6 43 58 16 22 16 18 28 27 0 0 4 270 128 | 366 306 145 308 256 566 299 379 804 442 689 697 1,019 972 | 81 727 630 204 417 39 35 45 7 0 0 0 0 … | 208 746 483 167 260 33 43 39 17 15 26 0 0 … | 289 1,473 1,113 371 677 72 78 84 24 15 26 0 0 … | 441 990 717 496 651 589 316 396 784 442 689 693 749 … | 214 789 541 183 282 49 61 67 44 15 26 4 270 … | 655 1,779 1,258 679 933 638 377 463 828 457 715 697 1,019 … |
各年『イギリス領事報告』(国立国会図書館蔵)より作成.
単位未満は4捨5入.…は不明.
ところで表6-21は在函イギリス領事の報告した外国商船の輸送に係わる明治元年から10年までの函館の貿易の推移表であるが、これは函館・外国間の輸出入と、函館・国内開港場間の移出入の2本立てとなっている。日本側史料により作成した表6-19とこの直輸出入を比較すると、特に輸出はかならずしも一致しない。この点についてイギリス領事ツループは4年、5年の報告で輸出入表は函館に在留する外国商人から提供を受けて作成しており、日本人の荷主が外国船に船積した商品については不明ではあるが、外国商人による外国商船の貿易に関した報告は正確なものであると強調しており、税関当局者から年間の貿易報告書を入手したが、非常に不完全なもので役に立たないと述べている。また報告書には輸出入税の表記も掲載されていることから領事のデータは信憑性は高いと思われる。外国商船によるこれらの輸送に関する表記が「DIRECT TRADE」あるいは「INDIRECT TRADE」とあるところから、輸出の場合でいえば外国商船が函館で購入して国外や他の開港場に輸送して売却する場合、あるいは単に運賃輸送の場合、さらに後者の運賃輸送の場合には外国貿易品以外の輸送も含まれてくる。日本側の史料との食い違いの理由はこうしたことと関連があろう。従って日本側の資料は最終的に通関手続きをして一旦他の開港場-それらの大半は横浜であるが-に移出したものを輸出品に含んでいると考えられる。