取扱向大意心得書
　　　　　文久元辛酉年調　　　　　福島屋文書　第三六号　　　　　　　(市立函館図書館所蔵)
　　諸産物御取開
　　　　　　　　　　　　未十二月七日評決
　　　　　　　　　　　一杉浦嘉七義金銀山並諸産物御取開初年ゟ出精相勤殊ニ品々諸失費相掛候ニ付都テ諸
　　　　　　　　　　　　産物会所取扱之分売捌方之弐分五厘並蝦夷地軽物山且交易品御払高之百歩一為御手
　　　　　　　　　　　　当被下右ニ付会所手代定人足小遣詰料持運賃ハ被下候積事
　　　　　　　　　　　　　　但古産物モ同様之取扱ニ候事尤松前江差ニテ問屋ニモ其外取扱当地江不差廻候
　　　　　　　　　　　　　　分ハ其処取扱候者江被下喜七ヘハ不被下候事
　　　　　　　　　　　一去ル辰正月十三日箱館領六ヶ場所金銀銅鉄鉛山其外諸産物類為御見分下野守殿並組
　　　　　　　　　　　　頭河津三郎太郎御勘定笠原五太夫其外支配向御普請役等出役山々篤ト取調候処川汲
　　　　　　　　　　　　山銅鉱相願候ニ付間掘取掛古部椴法花等モ追々願人等有之間掘申付置候積リ同月中
　　　　　　　　　　　　伊勢守殿江申上置相成候事
　　　　　　　　　　　　　　但古部之義ハ地蔵町忠吉ト申者願之上相稼其後御手山相成椴法花山モ御取開ニ
　　　　　　　　　　　　　　候得共初発之儀ニ付石模様宜敷ニ相見出方ニ至リ歩合相分リ候間辰五月休山相
　　　　　　　　　　　　　　成候事
　　市ノ渡鉱山
　　　　　　　　　　　一市ノ渡鉛山之義去ル辰五月六日御評議済ニテ為試問掘合取掛年々〓筋厚薄有之候処
　　　　　　　　　　　　午年六月以来追々模様宜引続鉱石荷掘相成同年九月中ニ至リ盛山相成候赴届出候ニ
　　　　　　　　　　　　付河津三郎太郎為見分罷越候段見込候間数迄ハ穿入不申候得共敷内一圓鉱石相顕模
　　　　　　　　　　　　様宜荷掘モ相急ニ付盛山相成候趣午五月中備後守殿江御追達相成候事
　　鉱山仕事師共病難
　　　　　　　　　　　　己二月五日評決
　　　　　　　　　　　一金銀山仕事師共病難御救之義四五十日相煩候モノ江ハ薬料トシテ金三分ゟ壱両ト日
　　　　　　　　　　　　当ニイタシ差遣尤時宜ニ寄人当ニ応ジ取拾イタシ死失取置候義ハ村内江申付金壱両
　　　　　　　　　　　　宛差遣シ候様但諸品人足トモヘ売渡候ニ付テハ損品月減之見込ヲ以二割掛ニテ売遣
　　　　　　　　　　　　シ候ニ付右二割残金之分ハ染金ニ相成候間右ヲ以支払候事
　　　　　　　　　　　　　　但当時諸品物トモ杉浦嘉七ヨリ仕送為致候ニ付二割除金等ハ無之事
　　川汲一ノ渡鉛山
　　　　　　　　　　　己八月五日評決
　　　　　　　　　　　一川汲一ノ渡鉛山為見分罷越候役々立合方共山本止宿中賄代之義ハ御定之賄代ニテハ
　　　　　　　　　　　　不引足ニ付壱人二百文中壱人百廿五文宛払候積且奉行衆御止宿之節ハ自然多人数ニ
　　　　　　　　　　　　テ相成諸事相整不申山許詰所ニテハ取賄出来兼可申候ニ付為持運払方其外仕来之通
　　　　　　　　　　　　取斗候積取極候事
　　　　　　　　　　　　酉十月廿五日評決
　　　　　　　　　　　一河汲山之儀ハ銀銅之見込ニテ捗取不申五ヶ年十ヶ年ニハ見込体図迄至リ兼候場所故
　　　　　　　　　　　　差向ユウラツフ鉛山取開ニ相成大工其外人数不足ニ付河汲之方暫時休山之積去末十
　　　　　　　　　　　　一月中御評義相済右人数ヲ以ユウラツフ鉛山御取開ニ相成追々金掘多人数相成候上
　　　　　　　　　　　　河汲山御取掛リ相成候積有之候事
　　　　　　　　　　　　酉正月九日評決
　　　　　　　　　　　一南部美濃守家来同預銅山ニ先役岩尾勝右衛門同浦手代石川仁吉義何事モ山方切者之
　　　　　　　　　　　　者ニ付御呼寄ニ相成勝右衛門トハ年々帰国之節勤日数ニ応シ御手当金被下仁吉義ハ
　　　　　　　　　　　　壱ヶ月金二両二歩宛被下来候処勝右衛門義山許出役中ハ詰合ニ同様御入用品遣払其
　　　　　　　　　　　　外トモ都テ取扱申渡市ノ渡ユウラツフ両山兼務掛同心振合ニ見合壱ヶ月金二両宛ユ
　　　　　　　　　　　　ウラツプ山出役中ハ一日限二匁宛別段御手当トシテ被下候事
　　　　　　　　　　　　申三月廿八日評決
　　　　　　　　　　　一金銀山仕送リ御用品之義松浦嘉七ヨリ都テ元代ニテ御買上取斗日々御入用ニ申上候
　　　　　　　　　　　　処年々冬ヨリ翌春三月頃迄ハ味噌繩莚草履草鞋其外品々仕送リ為致置候ニ付鼠喰損
　　　　　　　　　　　　品御出来仕埋方無之難渋之赴ニ付以来都テ一割掛リニテ御買上相願御聞届相成候事
　　　　　　　　　　　一松前大松前町廻船問屋山形屋八十八御時節柄相並金銀山御取開為御入用去ル来年ヨ
　　　　　　　　　　　　リ酉年迄三ヶ年之間壱ヶ年金五両宛差出追ル盛山之上御下金相願右ニ付内外願筋モ
　　　　　　　　　　　　無之寄持之義ニ付願之趣御聞届相成伺之上産会所付用達申付候事
　　河汲砥山
　　　　　　　　　　　一河汲峠下砥山之義先年ヨリ試穿イタシ去々来年八月中河津三郎太郎家来佐分利泰蔵
　　　　　　　　　　　　浪人岡本藤市其外職人共差出右掘取江戸硯職人松之助等御呼寄相成追々掘取候所右
　　　　　　　　　　　　模様モ宜候ニ付精々取出シ積ニテ右松之助江申付江州高島其外ヨリ職人之雇方為致
　　　　　　　　　　　　候随テ山□ハ役家取建掛リ之者相詰御入用請払其外取締イタシ並右佐分利泰蔵岡本
　　　　　　　　　　　　藤市共モ越砥硯見出シ方イタシ積ニ候事
　　　　　　　　　　　　　　但硯石之義ハ松之助願取ニテ相稼罷在候事
　
　　硯石
　　　　　　　　　　　一硯石之義上石之分ハ役々願請之積ニテ御開取斗下品之義ハ売捌所江相渡為売捌候積
　　　　　　　　　　　　随テ役々願請御払直段左之通リ候事
　
　　　　　　　　　　　　　厚凡五分　　　　　　　　　　　一日壱人前職分
　　　　　　　　　　　一　竪四寸五分　温公形硯二面　　　但壱人ニ付給代銀六匁ツツ
　　　　　　　　　　　　　巾三寸二分
　　　　　　　　　　　　　　　此元代銀六匁　　但壱面元代銀三匁ツツ
　　　　　　　　　　　　　　　右之外諸掛リ共仕上手間穿之一倍
　　　　　　　　　　　　　　　銀六匁　　　　　壱面願請代
　
　　　　　　　　　　　　　厚凡七分　　　　　　　　　　　右同断
　　　　　　　　　　　一　竪　五寸　　　同　　壱面半　　但右同断
　　　　　　　　　　　　　巾三寸七分
　　　　　　　　　　　　　　　此元代銀六匁　但壱面元代銀四匁ツツ
　　　　　　　　　　　　　　　右同断銀八匁　右同断
　
　　　　　　　　　　　　　厚凡八分
　　　　　　　　　　　一　竪五寸五分　　同　　壱面　　　右同断
　　　　　　　　　　　　　巾三寸五分　　　　　　　　　　但右同断
　　　　　　　　　　　　　　　右同断銀拾二匁　右同断
　
　　　　　　　　　　　　　厚凡九分
　　　　　　　　　　　一　竪　六寸　　同　　壱面　　　右同断
　　　　　　　　　　　　　　巾四寸　　　　　　　　　　但右同断
　　　　　　　　　　　　　　　此元代銀六匁
　　　　　　　　　　　　　　　右同断銀十三匁　右同断
　　　　　　　　　　　　　是ハ元代ハ前同様ニ候得共大小同直段ニ百ハ不都合
　　　　　　　　　　　　　同手間ニて一寸増銀二匁五分増ハ壱匁□直段相増候積
　
　　　　　　　　　　　　　厚凡壱寸
　　　　　　　　　　　一　竪　七寸　　　同　　壱面　　　右同断
　　　　　　　　　　　　　巾　五寸　　　　　　　　　　但右同断
　　　　　　　　　　　　　　　此元代銀六匁
　　　　　　　　　　　　　　　右同断銀十五匁　右同断
　　　　　　　　　　　　　是ハ右同断ニ付銀二匁増之積リ
　
　　　　　　　　　　　　　厚凡九分
　　　　　　　　　　　一　竪　六寸　　　唐彫壱面　　　　右同断
　　　　　　　　　　　　　巾　四寸　　　　　　　　　　但右同断
　　　　　　　　　　　　　　　此元代銀六匁
　　　　　　　　　　　　　　　右同断銀十三匁　右同断
　
　　　　　　　　　　　　　厚凡八分
　　　　　　　　　　　一　竪　五寸　　　角彫壱面　　　　右同断
　　　　　　　　　　　　　巾　三寸　　　　　　　　　　但右同断
　　　　　　　　　　　　　　　此元代銀六匁　　但壱面元代銀二匁ツツ
　　　　　　　　　　　　　　　右同断銀四匁　　右同断
　
　　　　　　　　　　　　　厚凡七分
　　　　　　　　　　　一　竪四寸五分位　玉石壱面　　　　但右同断
　　　　　　　　　　　　　巾二寸七八分　　　　　　　　　一日四人掛リ
　　　　　　　　　　　　　　　此元代銀二拾四匁
　　　　　　　　　　　　　　　右同断銀四十八匁
　　　　　　　　　　　　　是ハ元石穿出方引切等並石ヨリ格別手間相掛リ候ニ
　　　　　　　　　　　　　付書面之通相成申候
　　　　　　　　　　　　　厚凡六分
　　　　　　　　　　　一　竪五寸五分ゟ六寸迄　同　壱面　但右同断
　　　　　　　　　　　　　巾　同断　　　　　　　　　　一日五人掛リ
　　　　　　　　　　　　　　　此元代銀三拾匁
　　　　　　　　　　　　　　　右同断
　　　　　　　　　　　　　　　銀六十匁　　五寸五分代右同断
　　　　　　　　　　　　　　　銀六十一匁　六寸代
　　　　　　　　　　　　　是ハ前同断但壱寸増銀二匁相増候積リ
　　　　　　　　　　　一　硯元右之儀ハ仕上リ右直段半減之事
　　　　　　　　　　　一　砥石並鞘水直段左之通
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　元代銭五十八文
　　　　　　　　　　　一　剃刀砥　　　　　　上之分壱倍五割掛
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　此捌所渡銭百四十五文
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　中之分一倍掛
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　此捌処渡銭百十六文
　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　元代銭二十七文
　　　　　　　　　　　一　砥石臺　　　　　　五割掛此捌所渡
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　銭四十一文
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　元代銭百五十八文
　　　　　　　　　　　一　名倉砥　　　　　　上之分二倍掛
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　此捌所渡銭四百七拾四文
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　中之分一倍掛
　　　　　　　　　　　一　鞘水　　　　　　　此捌所渡銭三百拾六文
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　元代銭三拾壱文
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　一倍掛此捌所渡銭六十二文
　　　　　　　　　　　　　右直段ニテ願受並御払相成候事
　　　　　　　　　　　　　申八月六日評決
　　　　　　　　　　　一松平右京亮元家来浪人岡本藤市儀砥石研究方切者之者ニテ右売捌方其外トシテ江戸
　　　　　　　　　　　　表江罷出引合其外骨折候ニ付松川並之助引受ニテ川汲砥山ヲ給方申付砥石切出シ方
　　　　　　　　　　　　始山本取締トシテ差遣シ為御手当当一ヶ月金二両一日白米八合味噌四十匁宛被下候
　　　　　　　　　　　　事
　　農夫頭取甚右衛門
　　　　　　　　　　　申四月二日
　　　　　　　　　　　一河汲砥石山御取開相成候ニ付テハ亀尾御手作場農夫頭取甚右衛門義此趣意相並右砥
　　　　　　　　　　　　石山最寄江自分入用ヲ以家作取建出役之モノ其外休泊ハ勿論都テ山許ゟ切出候御品
　　桂台開発　　　　　　運送御用無差支様相勤申度右ニ付牛馬飼立所其外小屋取建方其余畑地共請地相願候
　　秣場　　　　　　　　ニ付開墾方取斗候積リ且右牛馬秣場トシテ銭亀沢之内字桂臺ハ申処受地相願掛定役
　　　　　　　　　　　　出役之□夫々地処割渡シ候処右家作取建田畑開発其外諸入用トシテ金二十五両拝借
　　　　　　　　　　　　相願返納之義ハ酉ゟ丑迄五ヶ年賦ニテ砥石運送賃ヲ以返納之積相願御聞届相成候事
　　　　　　　　　　　酉二月十二日評決
　　　　　　　　　　　一右砥石山御入用米噌其外諸品共是迄産物会所ヨリ仕送リ候処右甚右衛門儀砥石運送
　　　　　　　　　　　　御用モ相勤同所最寄移住イタシ候ニ付役家々買物職人入用品トモ都テ差送リ御買上
　　　　　　　　　　　　之義相願御聞届相成候事