相次ぐ水害と商店街

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昭和五十年(一九七五)八月には土淵川が氾濫し、市内の中心商店街が被害を受けた。この水害は、台風五号くずれの低気圧によるもので、青森県内では土淵川のほか、平川浅瀬石川が氾濫し、弘前市、黒石市、大鰐町ほかが被害を受け、被害者は三万五〇〇〇人、被害額は二〇〇億円であった。土淵川に関しては、七ヵ所の橋梁が流失し、カネ長デパートほか下土手町商店街が特に大きな被害を受けた。

写真178 50年8月20日水害土淵川境橋付近)

 昭和五十二年(一九七七)八月にも水害が弘前市を襲った。この水害は八・五水害と呼ばれ、その被害額は昭和五十年の水害を上回った。この水害のうち、商工関係の被害は次のように記されている。
 津軽地方を襲つた集中豪雨いわゆる八・五水害は、総額百九十億円をこえる被害をもたらし、弘前市のみでも寺沢川土淵川沿岸を中心に床上浸水、家屋の全半壊、橋梁流出、多数の死傷者を出し、昭和四十九、五十年の水害をはるかに凌ぐ惨状を呈したが、弘前商工会議所では、災害の翌六日早朝より、職員九名が、市役所職員と共に商工関係業者の被害調査に乗り出した。被害件数は四六七件(床上浸水)、被害総額は七日午後二時現在で十億五七四万円に達し、その後の調査でさらに増加を続けている。(中略)
 集中豪雨が最も激しく、寺沢川上流大堤が決壊した午後四時ごろは、まだ日没前であつたため、水害の苦い経験を有するスーパーやデパートなどでは、入口を売物の砂糖の袋や、布団類の物量作戦で阻止した等の例外もあるが、大部分(〔カ〕)は前回水害時の降雨量の約五倍二五三ミリ、更に大堤の決壊という決定的な状況を把握することができなかつたため、二階がありながら階下の押入の上段へ、とりあえず運びあげたり、あるいは自分のところまではとの安心感から、意外な被害を蒙つたのが実状。
 弘前商工会議所では逸早く同所内に金融相談所を設ける一方、県に激甚災害指定を求めるなど、活発な活動を展開したが、ねぷたまつりの中止などをふくめて、これら商店街、料飲街の復旧には、相当の痛手を負うことになり、今後の経済状態救済施策如何によつては、廃業を余儀なくされる店舗も出るものと憂慮されている。
(『弘前商工会議所会報』二四二号)

 商工業関係施設の被害は表49のとおりであった。弘前市と弘前商工会議所商工会議所特設コーナーにおいて、水害金融の相談を始めた。商工会議所の会報によれば、国民金融公庫、中小企業金融公庫、商工組合中央金庫による融資制度が、フルに活用されているほか、国民金融公庫から貸付を受けている被災者には返済猶予等の道が開けており、弘前税務署では昭和五十二年度の確定申告書に必要となる次の点の確認保存方を注意している。
 一、事業用資産(商品、材料、機械等)の損害をよく調べて記録を保存すること。

 一、家庭用資産については、確定申告書で、雑損控除となるので、損害をうけた家財等を時価に計算し記録を保存すること。

表49 商工関係施設の被害
町名または町会名被害状況業種別被害金額(千円)
床上浸水全・半壊商業製造業その他
小売業卸売業
茂森新町20-2031451140,430
茂森町213---2111,500
在府町3141-1-310,000
下土手町23-2323-23--278,000
鍛冶町59-596-6-53138,500
鍛冶町29-29---128
南川端町7-72-2-545,700
北川端町36-365-522970,300
桶屋町18-186-6-1219,800
徒町・田代町6-6----645,000
徒町川端町13-135-5-850,000
中央通り17-1722431011,000
徳田町・南柳町7-71232271,000
南・北横町60-6016925132210,450
上和徳33-331812303-16,700
和徳大通り3-33-3--350
和徳野田9-9112166,920
百石町39-3930-30-993,000
東長町3-33-3--2,500
田茂木町山王3-31-1-23,700
田茂木町161177184540,600
亀甲町2-21-11-550
田町2-21-11-2,200
駒越町3-31-12-800
富田町6-65-51-1,810
富士見町3-31-1-23,600
堅田宮川、富田22-229-97659,100
小比内2-22-2--2,000
富田4-43-3-1930
三岳町2-21-1-1250
中野6-66-6--920
その他11-114151522,000
471347416829197492281,060,110
弘前市『昭和52年8月5日災害概況報告書』昭和54年から

 また、被害を受けた事業所は国税、県税、市税について、申請により減免及び申告、納付の期限の延長、徴収猶予の制度もある。なお、税関係については弘前税務署、弘前県税事務所、弘前市税務課に問い合せるよう呼びかけた(同前)。