そこで、ここに場所産物の集荷、売買過程に直接介入する問星の断宿としての機能の変化をみると、さきに第2章第3節3項で述べた通り、断宿というのは、場所産物に対する問屋の支配権をあらわす、問屋機能の中でも重要な構成部分であるが、場所請負制が未発達のうちは、その権利内容も不安定なものであった。しかし、化政期以降場所請負制度が全面的に発展するに至って、断宿の場所産物に対する支配権の内容も、より確固たるものに変化してきている。それを総合的に規定したものが、場所請負制復活直後の文化12(1815)年の規定である。すなわち、
蝦夷地請負宿取究之事 |
一、蝦夷地往返の船は、定例の通、場所断宿にて御判願船改等致すべき事。 |
但、松前受負場所も前同断。 |
一、場所荷物運送並に買附船の事。 |
但、場所登り御口銭並に口銭は場所宿受用、積付登り出御口銭並に諸掛り共船宿にて受用致すべく候。 |
一、場所買附積登りの荷物、当所にて売払い候節は、場所登り御口銭、口銭は定例の通り場所断宿にて受用の事、又船宿は右荷物売代金船手え相渡し候節、売仕切表を以て口銭蔵敷受用致すべき事。 |
但、右荷物当所払の節、入札に致さず其船宿限にて残らず取扱い候はば、売主と相対の上当処売口銭用捨の儀格別の事。 |
一、場所並に船手に掛りこれ無く、問屋並に小宿にて場所荷物買附口銭割合の事。 |
但、場所断宿並に船宿の外、脇宿にて場所請負人江買附相談いたし候共、其場所断宿にて御改を受け御判願致すべく候。右船積登り御口銭並に口銭は前文の通り場所宿受用の事。 |
上方江積付登り諸掛りは、船宿と世話方の問屋と半分つつ分口銭致すべく候事。又、小宿にて相談いたし候節は、船宿は七分小宿は三分の割合にて受用致すべき事。若し右荷物当所にて残らず売払い候節は、売口銭蔵敷共受用右割合同様に候。 |
一、松前請負場所当所取扱前同断の事。 |
一、蝦夷地産物積取船運送に相雇い候節は、運賃高の内三分通り片金は船宿受用の事。 |
(但し書略) |
一、帆養雇船は積登り候上、中荷物御口銭、口銭は場所宿の受用割合の分は、船宿にて右船江仕切差出し諸掛り受用致すべき事。 |
(以下略)(『箱館問屋儀定帳』) |