弘前市における県税と国税

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表26は、弘前市における県税の推移を示している。主要な県税営業税関係の諸税と雑種税、戸数割である。地租割は五%前後を増減し、明治三十二年の地租増徴にかけて漸増したこと以外には、際立った特徴は見られない。
表26 弘前市県税(予算)
(単位:円、但し下から4段は%)
明治22年明治26年明治32年明治37年明治42年大正3年大正8年大正13年
地租78.1447.5832.51,102.41,355.11,711.86,907.09,228.8
営業税4,757.24,724.12,857.43,299.84,648.34,376.79,325.811,620.5
営業税付加税0.00.01,491.32,381.84,564.43,590.012,233.749,416.1
雑種税831.51,004.33,404.06,765.59,298.18,887.722,729.848,494.3
所得税付加税0.00.00.00.02,863.1907.48,395.58,475.4
鉱業税付加税0.00.00.00.07.54.135.40.0
砂鉱税付加税0.00.00.00.00.00.00.00.0
売薬営業税付加税0.00.00.00.00.00.06.40.0
戸数割581.14,924.74,771.24,940.47,137.66,343.529,466.556,743.2
 合 計6,247.911,100.713,406.318,489.929,874.125,821.289,099.9183,978.3
地租割/合計×1001.34.06.66.04.56.67.85.0
営業税関係税/合計×10076.142.632.430.730.830.924.233.2
所得税付加税/合計×1000.00.00.00.09.63.59.44.6
戸数割/合計×1009.344.435.626.7223.924.633.130.8
国立公文書館所蔵『青森県統計書』各年次
注)1営業税関係税は、営業税営業税付加税、売薬営業税付加税の計。
  2未だ存在しない租税等の取り扱いは表25に同じ。
  3青森県統計書』は、明治27年の県税の都市別内訳を掲載していないので、26年の数値を記した。

 明治三十五年の県税を、郡市別に見たのが表27である。弘前市と青森市での地租の比率の低さと、下北郡を除く郡部での地租の比率の高さが目立つ。なお、県税の中で主要な位置を占める戸数割は、明治三十七年については次のようなものであった。
表27 県税郡市別(明治35年)
(単位:円、但し下から1段は%)
東津軽郡西津軽郡中津軽郡南津軽郡北津軽郡
地租31,273.333,018.532,122.760,661.637,784.5
営業割2,854.82,610.81,607.23,643.82,762.3
雑種税9,913.812,383.25,138.08,641.38,929.1
営業税付加税280.8690.4156.1776.5739.5
戸数割12.459.213,737.810,633.419,112.013,967.6
 合 計56,781.862,440.749,657.392,835.264,183.0
地租割/合計×10055.152.964.765.358.9
 
上北郡下北郡三戸郡弘前市青森市
地租19,110.12,230.636,518.5985.21,324.5
営業割2,251.01,855.97,666.33,007.52,474.7
雑種税12,092.211,131.416,557.36,210.211,370.6
営業税付加税679.8315.31,467.62,136.04,793.5
戸数割13,055.95,717.023,498.25,361.85,996.2
 合 計47,189.021,250.185,708.017,700.725,959.5
地租割/合計×10040.510.542.65.65.1
青森県統計書』明治36年版

 一 毎戸平均割額…市内戸数五二三三戸一戸に付金一〇銭(五二三・三円)

 二 株金及び資金額割…県内各銀行の株券及び資金払込高金九三万八〇六五円の標準金額一円に付金五毛(四六九・〇円)

 三 諸公債証書額面金割額三円に付金五毛(七・八円)

 四 俸給報酬歳費賞与金額…一円ニ付金一厘(一八三・五円)

 五 地租金割額…一円に付金三銭(三三七・五円)

 六 直接国税営業税及び県税営業税雑種税金割額…一円に付金一〇銭(一〇二四・五円)

 七 貸座敷営業者割額…貸座敷営業者賦金月額七六円四五銭の標準額半ケ月分(三八・二円)

 八 月税営業者割額…一円に付金一〇銭(八・四円)

 九 人力車税割額…一円に付金五銭(九・五円)

 一〇 医師弁護士公証人執達吏所得納税者割額…一人に付金二円(五〇・〇円)

 一一 同上納税無資格者割額…一人に付金一円(二〇・〇円)

 一二 産婆及び鍼治者割額…一人に付金一五銭(四・三円)

 一三 寺院住職者割額…一人に付三〇銭の配当を以て毎寺院の檀家及び収入金に基づき五歩ずつの歩合にて平等にこれを賦課す(一七・一円)

 一四 建物賃貸価格割額…一円に付金一銭一厘四毛三八四一五(二三七三・九円)

(「明治三十七年度県税戸数割賦課法」『明治三十七~三十九年弘前市会決議書綴』)

 合計は五〇六七・〇円であり、地租金額割が占める比率は六・六六%である。この数値は決して無視できるものではないが、地租は戸数割の大勢を動かすとは言いがたいといえよう。
 表28は、市が課税する税目以外のすべてを含んだ弘前市で徴収された国税の一覧表である。弘前市で徴収される国税の内で、金額の最大のものは酒税であることが知られる。しかし、その全体に対する比重は、明治三十年代をピークとして以後漸減している。金額で見れば、大正末年がピークになっている。地租は、明治中期まで醤油税に次ぎ第三位の位置にあったが、明治後期以降、所得税や営業税に追い越されるに至る。地租増徴がなされた明治三十二年においては、地租の金額は明治二十六年に比べ、一・九倍に増加しているものの、全体に占める比率は明治三十二年の方が明治二十六年より小さくなっている。また、国税の中で伸び率の最も大きい租税は所得税であるといえる。
表28 弘前市国税課税一覧表
(単位:円、但し下から4段は%)
明治22年明治26年明治32年明治37年明治42年大正3年大正8年大正13年
地 租1,986.71,997.53,731.05,876.714,082.717,300.017,396.017,466.0
所得税742.4724.56,837.418,694.740,697.731,562.091,984.0248,344.0
営業税0.00.07,526.317,635.436,577.532,984.042,594.074,365.0
酒税(酒造税)46,356.047,066.8162,608.1205,251.6289,767.5220,022.0219,155.0536,698.0
酒精営業税0.016.573.00.00.00.00.00.0
醤油税2,904.63,140.76,780.29,671.36,799.45,889.07,276.07,481.0
醤油営業税0.0150.00.00.00.00.00.00.0
煙草税529.0465.00.00.00.00.00.00.0
証券印税997.90.00.00.00.00.00.00.0
売薬税0.0256.0205.00.0203.00.00.00.0
売薬営業税0.00.00.0234.00.0239.0217.00.0
鉱業税0.00.012.00.00.0422.0194.0741.0
相続税0.00.00.00.03,068.2677.01,923.03,798.0
織物消費税0.00.00.00.011,851.97,522.09,978.013,891.0
通行税0.00.00.00.00.00.00.00.0
菓子税801.7897.30.00.00.00.00.00.0
船 税0.013.10.00.00.00.00.00.0
車 税0.0303.80.00.00.00.00.00.0
国立銀行0.01,120.00.00.00.00.00.00.0
戦時利得税0.00.00.00.00.00.024,334.00.0
臨時利得税0.00.00.00.00.00.00.00.0
その他2,655.22.560.00.00.00.00.00.0
 合 計56,973.456,153.5187,833.0257,363.7403,047.5316,617.0415,051.0902,784.0
地租/合計×1003.53.62.02.33.55.54.21.9
所得税/合計×1001.31.33.67.310.110.022.227.5
営業税関係税/合計×1000.00.34.06.99.110.510.38.2
酒税/合計×10081.483.886.679.871.969.552.859.4
青森県統計書』各年次
注)1営業税関係税は、営業税、酒税営業税、醤油営業税、売薬営業税の計。
  2未だ存在しない租税等の取り扱いは、表25に同じ。
  3青森県統計書』は、明治27年の国税の郡市別内訳を掲載していないので、26年の数値を記した。

 表29は、明治三十五年の青森県国税の郡市別内訳である。弘前市及び青森市の地租の比率が小であることが分かる。また、郡部においても、地租の比率は大きな差があり、概して旧南部藩の支配地域の諸郡で地租の比率が小さい。主要な税を図示した図2からわかるように、各郡の租税の構成比の差異は、地租の絶対額の差と酒税などの地租以外の大きさによる。これによれば、地租の比率が低い下北郡は地租の額自体が少ない。これに対して、地租の比率が高い北津軽郡は酒税が少ない。
表29 国税郡市別(明治35年)
(単位:円、但し下から2段は%)
東津軽郡西津軽郡中津軽郡南津軽郡北津軽郡
地 租69,041.774,676.774,151.5139,644.787,050.7
所得税2,734.34,456.32,851.48,379.38,081.0
営業税1,231.13,046.7706.83,386.63,236.5
酒 税41,878.854,262.614,788.0202,218.992,572.1
醤油税413.51,254.4175.22,251.91,994.8
売薬営業税10.066.032.0125.047.0
鉱業税192.0564.4228.1140.072.9
旧税追納0.30.00.00.00.0
 合 計115,501.8138,327.092,933.0356,146.3193,054.9
地租/合計×10059.854.079.839.245.1
酒税/合計×10036.339.215.956.848.0
 
上北郡下北郡三戸郡弘前市青森市
地 租30,257.35,141.577,959.73,740.74,230.7
所得税3,638.72,706.76,406.310,067.88,076.4
営業税2,948.31,373.46,597.99,392.811,429.7
酒 税71,719.520,542.1220,494.2248,359.423,316.7
醤油税2,330.04.04,001.08,493.94,113.9
売薬営業税4.010.048.0203.060.0
鉱業税0.0156.5351.50.00.0
旧税追納0.00.00.00.00.0
 合 計110,897.829,934.2315,858.7280,257.651,227.3
地租/合計×10027.317.224.71.38.3
酒税/合計×10064.768.669.888.645.5
青森県統計書』明治36年版


図2 国税郡市別(明治35年)
表29より作成