花巻面

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花巻面河成段丘であって、黒石市花巻および豊岡などが位置する。標高一〇五~一一五メートルの、浅瀬石川への緩い傾斜面で、浅瀬石川に沿って最大幅五〇〇メートルの帯状の分布を示し、背後には柏木(かしわぎ)山、高清水(たかしみず)山などの山稜が迫っている。平野部に面した丘陵周縁では確認していない。図22は花巻面上の石名坂浄水場のボーリング資料であるが、丘陵を構成する火砕流堆積物である軽石質凝灰岩と、これを不整合に覆う段丘砂礫層(厚さ約六メートル)が認められる。砂礫層の上位には厚さ約四メートルの褐色の粘土質ロームが載るが、全体的に下位層の混入物(軽石粒)が認められ、崖錐(がいすい)性(11)堆積物の様相を呈している。花巻面は最終間氷期(約一二~一三万年前)の海進期(12)に形成された中位段丘と推定される。

図22 八甲田第1期と第2期火砕流堆積物ボーリング資料

 火砕流起源の軽石質凝灰岩(八甲田第二期火砕流堆積物)の下位にも厚さ約五メートルの砂礫層があり、基盤岩である砂質凝灰岩(大釈迦層)を不整合に覆っている。この砂礫層は側方変化が著しく、同地点での他のボーリング資料では基底に層をもつ軽石粒混じりの細粒砂層へと変化している。なお、砂礫層の存在は、平賀丘陵周縁において、八甲田第二期火砕流堆積物を載せる高位段丘の可能性を示すもので、弘前市郊外の墓地公園でも確認されている。
 花巻面北側の柏木山などは八甲田第二期火砕流堆積物相当の軽石質凝灰岩で構成されている。大釈迦丘陵では、青森市岩渡(いわたり)にある産廃処理場内で確認したように、八甲田第一期火砕流堆積物および同第二期火砕流堆積物の二枚の軽石質凝灰岩堆積している(写真34)。同処理場近くのボーリング試料に基づく、フィッション・トラック法(13)による年代測定では、上位の八甲田第二期火砕流堆積物が約三七万年前で、下位の八甲田第一期火砕流堆積物が六五万年前の数値が得られている(図22・表5)。また写真35に示したが、大鰐町鯖石(さばいし)に分布する「さば石」も年代側定では約四九万年前であって、八甲田第二期火砕流堆積物に比定される(表5)。この二枚の火砕流堆積物は行楽地で有名な田代平高原に由来し、カルデラを形成したときの噴火活動によってもたらされたものである。青森空港の位置する大釈迦丘陵も、青森市南方の丘陵でもこれら二枚の火砕流堆積物で形成されている。

写真34 青森市岩渡の産廃処理場。中部に岡町層をはさみ、下部が八甲田第1期、上部が八甲田第2期火砕流堆積物である。

表5 フィッション・トラック法による年代測定一覧
地層放射年代試料採取地備   考
八甲田第2期
火砕流堆積物
(Twt f1)
0,37±0,08MaN 40°47.9'
E140°41'
田代平溶結凝灰岩ともいう。青森市岩渡の産廃処理場近くより採取
(KFT 960116-2063)
八甲田第1期
火砕流堆積物
(Twt f2)
0,65±0,16MaN 40°47.9'
E140°41'
鶴ヶ坂層ともいう
(KFT 960116-2064)
鯖石0,49±0,12MaN 40°32'
E140°33'
田代平溶結凝灰岩ともいう。大鰐町鯖石より採取
(KFT 941124-1784)
(株)京都フィッション・トラックによる(Maは100万年)


写真35 大鰐町鯖石の「さば石」採石場