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作物の特産化

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 二十六年発行『北海之殖産』(三四号)の「札幌近村の農事概況」に各村の地味に適した作物が載せられている。苗穂、札幌、雁来、丘珠、篠路は大麦、小麦、大豆、小豆、とうもろこしである。白石、豊平、月寒、平岸は小麦、裸麦、燕麦、蕎麦、とうもろこし、黍、大豆、小豆、粟、じゃがいも、米である。山鼻は大豆、小豆、大麦、小麦、蕎麦、粟である。琴似、発寒は大豆、小豆、大麦、小麦、麻、亜麻である。上手稲、下手稲、山口は大麦、小麦、大豆、小豆である。これらの奨励作物が各村の農民にどのように影響を与えたものか判断できないが、十五年の『勧農協会報告』(一〇号)の石川理右衛門の通信によるとすでに次のように特産化している村もあった(石川の札幌県令への報告の写は市史第七巻三一〇頁に掲載、『勧農協会報告』の通信とは多少字句表現が異なる)。雁来村は大麦、小麦、大豆、小豆、蔬菜、苗穂村は楮(こうぞ)、じゃがいも、大根、大麦、小麦、大豆、小豆、麻、札幌村はとうもろこしを主とし大麦、小麦、蔬菜、麻、丘珠村は大麦、小麦、蔬菜、篠路村は例年水害で播種期が遅れ十分の収穫なし、対雁村は大豆、小豆、上白石村は蚕、桑、麦、豆、白石村は蚕、桑、麦、豆、豊平村は蔬菜少し、平岸村は蔬菜少し、月寒村は大麦、小麦、牧草、山鼻村は桑、麦、豆、円山村は蔬菜を多く栽培し札幌市街へ販売し、琴似村は麦、豆、麻、蔬菜、発寒村は穀菜少し、上手稲村は蚕、桑、麦、豆、百合、下手稲村は粟、黍、麻、蕎麦、山口村は開墾中だが粟、黍、蕎麦、麻となっている。
 道庁時代の農産物の統計を取扱っている『北海道庁統計書』『北海道庁勧業年報』『北海道庁拓殖年報』などには、当時園芸作物として分類されていた玉ねぎや大根などの蔬菜類の数字が抜けているため、明確な状態は把握できない。しかしこの時代に円山村の蔬菜、札幌村の玉ねぎ、新琴似村、篠路村の大根が特産化している。