市税の構造

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表22は、市税の弘前市歳入に占める位置を見るために、弘前市の予算を明治二十二年以後五年間隔で示したものである。これによれば、市の歳入に占める市税の構成比は、明治期から大正期にかけてしだいに減少していることが分かる市税の減少分を補っているのは、使用料及び手数料である。使用料及び手数料の内容は年代とともに変化している。これを明治三十二年及び大正八年について見たのが表23、表24である。明治三十二年においては、高等小学校授業料は手数料の項目にはなく、雑収入に含められている。
表22 弘前市歳入(予算)
(単位:円、但し下から2段は%)
明治22年明治27年明治32年明治37年
財産収入1,779.50.1132.62.7
使用料及び手数料0.0114.1495.71,323.7
国庫下渡金0.00.00.00.0
交付金(国)89.2102.9402.2540.0
交付金(県)0.0361.0355.0494.0
交付金(商業会議所)0.00.00.00.0
県補助金12.9118.71,034.33,636.5
繰越金0.00.00.00.0
寄付金0.00.00.0500.0
雑収入0.02,633.43,904.422,611.0
繰入金0.00.00.00.0
市 債0.00.00.00.0
市 税8,630.010,603.424,852.363,636.8
 歳入総計10,511.613,933.631,176.592,744.7
市税/歳入合計×10082.176.179.768.6
使用料及び手数料/歳入合計×1000.00.816.61.4
 
明治42年大正3年大正8年大正13年
財産収入3.04,458.02,784.46,053.0
使用料及び手数料2,026.714,865.658,547.1110,537.0
国庫下渡金0.00.06,114.313,970.0
交付金(国)1,365.41,046.12,863.35,782.0
交付金(県)589.8413.01,955.75,061.0
交付金(商業会議所)0.00.01.01.0
県補助金4,017.2152.31,400.04,593.0
繰越金50.01,000.03,500.011,482.0
寄付金500.00.00.0
雑収入37,111.016,734.04,956.012,567.0
繰入金0.05,329.51,279.71,030.0
市 債0.010,300.00.04,000.0
市 税70,399.639,706.5122,517.1260,537.0
 歳入総計116,062.794,005.0205,918.5435,613.0
市税/歳入合計×10060.742.259.559.8
使用料及び手数料/歳入合計×1001.715.828.425.4
『弘前市参事会決議書綴』各年次

表23 手数料予算
(明治32年)
項 目金額(円)
道路並木敷手数料10.0
県税督促手数料70.3
市税督促手数料52.6
市税督促手数料57.5
証明及び手数料24.2
閲覧手数料9.3
戸籍に関する手数料271.8
『弘前市会決議書綴』明治32年

表24 使用料及び手数料予算
(大正8年)
項 目金額(円)
使

火葬場使用料2,612.5
公園使用料130.0
公会堂使用料50.0
小学校授業料3,807.6
幼稚園保育料400.8
土地使用料6.2
病院使用料49,667.0


督促手数料1,080.6
証明照会閲覧手数料238.0
戸籍に関する手数料554.4
『弘前市参事会決議書綴』大正8年

 大正八年においては、収入の主なものは、弘前市立病院の診断料や入院料などの収入と、高等小学校実業補習学校・市外から通う生徒が支払う尋常小学校授業料からなる、小学校授業料の収入である。
 大正期に入ると市債も発行されるが、その額は少ない。国や県からの交付金は、国税地租や所得税、営業税、また、県税営業税営業税付加税、所得税付加税などの徴収に対する見返りが大部分である。大正八年においては、国税に関しては徴収額の三%と納税告知書一通につき二銭の交付で、県税については徴収額の四%の交付になっている(「大正八年度弘前市歳入出予算」『大正六~八年弘前市参事会決議書綴』所収)。
 表25は、弘前市の市税の五年ごとの一覧表である。明治・大正期を通じて、市税の中で最も多い租税は、戸別割ないしは戸数割付加税である。しかし、その比重は、年を追うごとにしだいに減少している。次いで比重が高いのは営業税関係税である。この税は、明治二十七年に二〇%を超えたが、その後一〇%台となり、またその数値はしだいに低下している。所得税付加税は、年とともにその比重を増しているが、絶対額は多くない。地価割などの土地関係税は、市税に占める比率が安定的ではない。地租の増徴がなされた明治三十二年には、地価割の額は倍増以上の伸びを見せているものの、合計額もそれ以上の伸びであったため、地価割が合計額に占める比率はやや下がっている。しかし、特別税の土地建物売買譲与税を加えると、土地関係税が全体に占める比率は高くなっている(「青森県弘前市歳入出予算書」各年次)。
表25 弘前市市税(予算)
(単位:円、但し下から5段は%)
明治22年明治27年明治32年明治37年明治42年大正3年大正8年大正13年
地租付加税0.00.00.00.00.0887.03,222.66,523.0
国税営業税付加税0.00.00.00.00.02,027.59,592.138,492.0
所得税付加税293.8292.71,391.53,209.33,063.31,394.011,522.416,842.0
県税営業税付加税0.00.00.00.00.02,236.46,971.410,289.0
県税雑種税付加税0.00.00.00.00.03,551.112,726.046,518.0
戸数割付加税0.00.00.00.00.019,384.363,245.4127,373.0
地価割0.0427.9975.2969.6771.60.00.00.0
営業割1,706.02,470.70.00.00.00.00.00.0
国税営業割0.00.03,840.25,126.13,625.20.00.00.0
県税営業割0.00.00.06,389.39,456.50.00.00.0
戸別割6,630.27,412.117,708.241,714.841,180.60.00.00.0
特別税上地建物
売買譲与税
0.00.0937.1721.9737.5562.51,391.80.0
特別建物坪数割0.00.00.05,505.711,564.89,663.713,845.414,500.0
 合 計8,630.010,603.424,852.263,636.770,399.539,706.5122,517.1260,537.0
地租付加税・地価割0.0427.9975.2969.6771.6887.03,222.66,523.0
土地関係税(含む特別税)0.0427.91,912.31,691.61,509.21,449.54,614.36,523.0
営業税関係税1,706.02,470.73,840.211,515.413,081.84,263.916,563.548,781.0
戸別割関係税6,630.27,412.117,708.241,714.841,180.619,384.363,245.4127,373.0
地租付加税・地価割/合計×1000.04.03.91.51.12.22.62.5
土地関係税/合計×1000.04.07.72.72.13.73.82.5
営業税関係税/合計×10019.823.315.518.118.610.713.518.7
戸別割関係税/合計×10076.870.071.365.658.548.851.648.9
所得税付加税/合計×1003.42.85.65.04.43.59.46.5
『弘前市参事会決議書綴』各年次
注)1土地関係税は、地租付加税、地価割、特別税土地建物売買譲与税の合計。
  2営業税関係税は、国税営業税付加税、営業税国税営業税県税営業割の合計。
  3戸別割関係税は、戸数割賦課税と戸別割の計。
  4上記の計算及び表中の記載において、租税自体が廃止されたり未だ存在しなかったりしたものを
  「0」として取り扱っている。

 次に、弘前市の歳入出予算書に見える市税の特記事項を、明治二十二年から五年おきに記すと以下のとおりである。なお、明治二十七年、三十二年には県税の戸数割に、それを上回る市税の戸別割が付加されている。
 明治二十二年
営業割…本年度地方税営業税ノ三分五厘、即チ営業税一円ニ付金三十五銭
戸別割…平均割即チ一戸ニ付金五銭、戸数割一戸ニ付金八厘四毛四七六八一
所得税付加税…前年度所得税ノ五分、即チ所得税一円ニ付金五十銭
 明治二十七年
所得税付加税…所得税一円ニ付五十銭
地価割…地価金一円ニ付五厘三毛五六五一五、地租一円ニ付二十一銭四厘二毛
戸別割…戸数割一円ニ付一円六十七銭九厘六毛四八五
 明治三十二年
所得税付加税…一円ニ付金五十銭
地価割…一円ニ付五十銭
戸別割…一円ニ付四円四十四銭八厘二毛五二九四八
特別税…土地家屋売買価格ノ千分ノ十、土地家屋譲与価格ノ千分ノ五
 明治三十七年
所得税付加税…一円ニ付金五十銭
地価割…一円ニ付金五十銭
国税営業割…一円ニ付六十銭
県税営業税雑種税割…一円ニ付一円(日月税、営業用人力車税ハ一円ニ付金五十銭)
戸別割…乗率未
特別税…明治三十二年と同
 明治四十二年
所得税付加税…一円ニ付三十五銭
地価割…一円ニ付四十銭
県税営業税雑種税割…一円ニ付金一円(日月税、人力車税一円ニ付金五十銭)
戸別割…追ッテ
 大正三年
地租付加税…宅地租一円ニ付五銭、其他一円ニ付十銭
国税営業税付加税…一円ニ付十一銭、売薬営業税一円ニ付四銭
所得税付加税…一円ニ付十一銭
県税営業税付加税…一円ニ付七十銭
県税雑種税付加税…一円ニ付七十銭(但日月税、営業用人力車税一件ニ付四十銭)
特別税土地建物売買譲与税…売買千分ノ十、譲与千分ノ五
特別税建物坪数割…賦課制限ノ八歩
 大正八年
地租付加税…宅地租一円ニ付十八銭、他一円ニ付四十二銭
国税営業税付加税…一円ニ付三十銭、売薬営業税一円ニ付五銭
県税営業税付加税…一円ニ付九十銭
県税雑種税付加税…一円ニ付九十銭、日月税、営業用人力車税、ソリ税、倉庫税、劇場税、人寄席税一円ニ付五十銭
戸数割付加税…一円ニ付二円八十六銭二厘一毛七朱余
特別税土地建物売買譲与税…売買千分ノ十、譲与千分ノ五
特別税建物坪数割…特別税条令制限全部
(同前)

 特別税を除き、市税もほとんどすべてが国税県税の付加税である。このことは、国税の一部を除き、市町村が租税の徴収を行ったことと整合的である。また、地価割や地租付加税に関しては、大正期以後、宅地租とその他の課税の税率が異なってくるのである。
 国税地租においては、明治三十二年に市外宅地の地租の税率が、それ以外についての税率よりも高くなったことと対比すれば、弘前市の市外宅地の地租は低く抑えられたといえる。