次に刑罰の種類は、死刑として(イ)鋸挽(のこびき)、(ロ)磔、(ハ)獄門、(ニ)斬罪、(ホ)下手人(げしにん)(解死人とも書く)、(へ)死罪、(ト)火罪(火焙(あぶ)り)の七種類がある。そのほかの刑罰には、重鞭刑(じゅうべんけい)追放・鞭刑追放・追放・重追放・軽追放・中追放・非人手下(ひにんてか)・町内払・村払・入牢・戸〆(じめ)・過料(かりょう)(贖(あがない)刑)などがあり(後の刑罰体系参照)、さらに時宜御沙汰(じぎごさた)(適当な時機の自由裁量)などがみえる。
「安永律」の施行の実態については、「国日記」によって、刑罰の規定と判例との関係を全体的にみると、規定に該当する判例のまったくないのが、「一、主殺之者御仕置」(一〇ヵ条)、「九、相対死之者御仕置」(三ヵ条)、「一四、隠田畑之者御仕置」(一ヵ条)である。
規定と判例との関係は、大別すると、①規定どおりに適用された申し渡しと、②柔軟性ある適用による申し渡しであった。注意すべきことは、「国日記」にみえる判例に、「安永律」の規定とまったく関係のないものがかなり多く存在することである。したがって「安永律」の運用については、「安永律」の規定にもとづく判決の申し渡しと、先例・慣習などを参照しての申し渡しとの二本立になっていた。
図180.安永律
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