表-6 札幌の行楽地 |
名所 | 位置 | 概 要 |
中島遊園地 | 札幌区の南端 | 札幌停車場より二〇町。十九年開削工事を起こし、二十年落成。面積約一〇町歩。園内にはタモ、セン、ヤナギ等の老樹と松を植え、東西二つの池あり、二月にはスケート遊びが行われる。池辺には桜木を植える。池中央に旗亭あり。二十五年設立の北海道物産陳列場(四月十五日~十一月十五日まで開場)、遊園紀念碑、競馬場等あり。老幼男女の散策する者少なからず。 |
岡田花園 | 中島遊園地内の 山鼻村に接する所 | 札幌区岡田佐助の所有にして、面積約三町歩余。札幌区の公有地を借り受け年々拡張す。園内には牡丹、芍薬、菖蒲、百合、各種盆栽等あり。二個の花室、池には金魚、緋鯉等を放ち、茶亭を構え、遊覧の客に供す。 |
東皐園 | 北八東一 | 園主上島正、十一年秋花菖蒲の種子を植え、改良に改良を重ね十七年優等な花を咲かせるに至る。地名東耕を名とし、道路を開削して公衆に縦覧す。東耕を東皐に改める。園内には牡丹一〇〇〇株、芍薬二~三〇〇〇株、花菖蒲、萩等あり。開園は毎年六月より十一月まで。 |
偕楽園 | 北七西七 | 四年岩村判官の設計、薄井監事偕楽園と名づく。はじめ園内に育種場、博物場、競馬場、偕楽亭、清華亭等があったが、育種場は札幌農学校附属農園となり、競馬場は中島遊園地に移り、博物場は北三条に移転。三十年偕楽園を対馬嘉三郎に払い下げる。三十一年斎藤いく、偕楽園内に旗亭偕楽亭を開く。 |
博物館 | 北三西八 | 札幌農学校附属植物園内にあり。二階造り、階上階下とも陳列場とし、本道所産の動・植・鉱物、アイヌの民具等を展示す。毎年四月より十月まで一週二回ずつ開館す。前方に温室あり。 |
円山 | 札幌郡円山村 札幌神社境内 | 桜樹数百株、桜花をもって有名。花季の花見には客群集して立錐の余地なし。 |
光風館 | 札幌郡下手稲村 | 二十六年十一月三日開業。所有東幸三郎。炭礦鉄道札幌駅より軽川まで六マイル五〇、同駅より一五丁。手稲山麓眺望良きところに立地し、建物北面のため夏涼しく、秋は紅葉を楽しむ。温泉はリウマチ、痛風、神経痛、皮膚病、腺病、気管支カタル、消化器病等に効あり。 |
定山渓 | 札幌郡平岸村 | 札幌区の西方七里一〇丁二五間。車馬あり。美泉定山の発見。当時旅人宿は佐藤伊勢造、寒翠閣の二戸。寒翠閣には鹿の湯あり。下方一里に黄金湯あり。この辺四方山に囲まれ、豊平川その中間を流れ、景観すこぶる良し。温泉はリウマチ、胃弱、眼病、皮膚病、婦人病等に効く。入浴の時期は五月より十一月まで。 |
登別温泉 | 幌別郡登別村 | 炭礦鉄道室蘭線登別停車場下車西北一里二八丁。車馬往復。旅館三戸。 |
カルルス温泉 | 幌別郡登別村字 ベンケネセ | 登別停車場より北方約三里。 |
このように神社仏寺への参詣というような宗教行事の間をぬって、移りゆく四季の風物を愛で、自然を愛でる遊覧が行事化していった。二月の中島遊園地の氷遊び、すなわちスケートが流行したのもこの頃からである。四月下旬、ようやく雪も消え黒土があらわれ、市中の人びとは円山や鴨々川河畔に散策に出かけるようになる。博物館が開館するのもこの頃で、週二日の開館日にはどっと人がくり出した。五月上旬は円山の梅も桜も一度に開花し、区民は商店や会社ぐるみで花見を楽しんだ。このほか一年を通じて花を観賞できる場所として、中島遊園地内の岡田花園と北八条東一丁目の東皐園(とうこうえん)があり、牡丹、芍薬、菖蒲、百合、萩等々、季節の花が楽しめた。市中より少し足を伸ばせば軽川の光風館、平岸村の定山渓温泉があり、種々の病に効用あるところから近郷近在から湯治客がやってきた。さらに幌別郡登別、あるいはカルルス温泉へも鉄道、馬車を乗り継いで湯治客が出かけるようになり、次第に行楽圏が広がっていった。