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道内大手企業

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 表26は、表25の対象となった一〇〇社のうち資本金一億円以上の一六社について、概要をまとめたものである。表では資本金順に並んでいるが、完成工事高は丸彦渡辺建設が首位であり、以下伊藤組土建、岩田建設、田中組と続いている。地元企業としては、地崎組が昭和四十八年四月に本社を札幌から東京へ移したために、表25の一〇〇社に含まれていない。しかし、その後も札幌を地盤として活動した企業なので、最初に地崎組の動向を述べることにする。
表-26 建設企業(資本金1億円以上企業)
 番号  企業名資本金
(万円)
従業員数
(人)
完成工事高
昭52(千円)
経常利益
昭52(千円)
官需比率
昭52(%)
  1 伊藤組土建80,00055416,105,40053,42567.8
  2 岩田建設50,00051015,435,407495,34552.0
  3 田中組38,00029712,137,560194,49073.9
  4 丸彦渡辺建設30,00055420,922,69780,78840.0
  5 住石扶桑工業28,0002305,601,00084,40231.9
  6 北炭建設20,0002535,536,78635,61573.8
  7 北海道機械開発14,0001322,287,0001,91786.1
  8 渥美工業14,00070998,75621,7442.3
  9 新太平洋建設12,0002298,956,851132,44653.6
 10 勇建設10,0001825,516,212186,00083.3
 11 石山組10,0002014,855,722378,29887.9
 12 国策建設10,0001174,955,00016,00056.4
 13 札建工業10,0002879,227,787433,58095.1
 14 道路工業10,0001364,222,558409,67986.4
 15 北海土木工業10,000752,387,00092,00087.6
 16 山田組10,0001373,211,606101,881100.0
札幌の100社編集委員会編『札幌の100社 総合建設業編』昭53

 地崎組は、本社移転と同時に地崎工業と会社名を変更した。すでに四十七年度の受注は本州二対道内一の割合だといわれている(道新 昭48・3・17)。表27に主な工事名をあげておいた。土木工事では、この時期の特徴は高速電車(地下鉄)工事、下水道工事、東部地区(小野幌ニュータウン、清田中央)宅地造成が大規模に行われたことであろう。建築工事では、西友、フードセンター、ニチイなどの大型小売店を後の地下鉄ターミナルにあたる地域に建設し、札幌駅南口に京王プラザホテル、北口にステーションホテルを建設している。また、郵便局、消防局、区役所、図書館などの官公需が多いことも特徴だろう。
表-27 地崎組(地崎工業)の工事実績
完工年工事名
昭46高速電車北21条一北18条間、キリンビール東札幌倉庫
 48札幌会館(北区北18条)、宅建センタービル
 49円山球場改修
 50高速電車二十四軒駅他、小野幌ニュータウン第1期造成
 51東札幌6条団地、西友西野店
 52茨戸排水区X4-1000第1工区下水道新設、サンピアザ(厚別副都心)、幌平橋ハイホーム、北42条ビル、フードセンター元町ビル
 54白石郵便局庁舎、繊維卸センター、
 56創成川処理区4-0100第1工区下水道新設、高速電車南郷駅構築、札幌高架東3-1、日住金札幌ビル
 57道央自動車道米里、豊平川処理区1-04000第2工区下水道新設、京王プラザホテル札幌、ホテルX・O
 58定山渓ダム堤体建設第1期、篠路拓北地区共同溝その2、ホテル鹿の湯宴会場増築、平和地区小学校、
 59米里中継ポンプ場、日本旅行ビル
 60定山渓鉄道跡地石山立体交差函渠他、札幌芸術の村基礎造成、南3条地中線新設
 61高速電車元町駅構築、札幌市消防局庁舎
 62白川浄水場内連絡管新設、エステラビル、北武会美しが丘病院
 63高速電車2~3号連絡線、藤野川改修工事第1工区、清田中央土地区画整理事業、世界食の祭典'88大谷地会場基盤整備、札幌ステーションホテル、札幌大学研究室
平 1社会福祉総合センター長生園、新札幌第一生命ビル、厚別区役所、札幌パークシティビル(ニチイ大谷地店)
  2南逓信病院、真澄寺別院、新札幌ターミナルビル、オリンピア南9条、札幌市中央図書館
  3ディスコ・キングムー
地崎工業社史編さん委員会編『地崎工業百年史』平4
1 JVも含む。

 表28は伊藤組土建の工事をまとめたものである。従来から地崎組が土木に重点があり、伊藤組は建築に重点があるといわれていたが、表を一瞥すると確かに建築工事の多さが目立つ。建築は多岐にわたっており、学校、庁舎、道・市の施設が並んでおり、表26の官公需の高さを裏付けるものとなっている。土木工事の方は地下鉄、上下水道、函館本線高架化関係が多い。次に岩田建設の概要をまとめた表29を検討しよう。土木では地下鉄、下水道、高速道路関係が目立つ。建築では、学校、光星地区高層住宅、北電、道銀などが目につく。『札幌の一〇〇社』では、官民比率が絶妙だと評されていたが、表26では官民がおよそ一対一となっている。
表-28 伊藤組の工事実績
完工年工事名
昭46曙中学校(南区真駒内)、北海道厚生年金会館、高速電車さっぽろ駅、4丁目プラザ、札幌市庁舎三越札幌支店、大通電電ビル、札幌プリンスホテル札幌競馬場
 47南区役所、北海道産業共進会場、札幌駅合同ビル、札幌駅西口地下ステーションデパート
 48星園高等学校、藻岩高等学校、平岸第2配水池、手稲排水区X-1000第2工区、札幌市第2清掃工場
 49茨戸排水区、厚別川排水区
 50高速電車二十四軒車輌基地、札幌大学3号館、同体育館、北海道近代美術館
 51清田高等学校
 52平岸第3配水池、札幌ターミナルビル
 53宮の森小学校、白石高架橋(札幌新道)
 55平岸第4配水池、札幌市第3清掃工場、麻生野球場
 56札幌大学図書館、札幌市青少年科学館
 57白川第2送水管硬石山トンネル、京王プラザホテル札幌
 58厚別下水汚泥コンポスト工場、道立三岸好太郎美術館、北海道開拓の村管理棟、第一高等学校記念会館
 59札幌流通総合会館
 60篠路コミュニティセンター
 61藻岩配水池、札幌市エレクトロニクスセンター、札幌医科大学附属病院
 62清田配水池、北海道教育大学本部管理棟
 63アスティ45、函館本線・札沼線連続立体交差
平 1北海道コカ・コーラボトリング本社、手稲区役所、7・1ビル(札幌駅北口)
  2五番館西武新館、発寒高架橋(札幌新道)
  3北ノ沢第2配水池
  4白川浄水場Ⅰ系着水井他、
  5サッポロファクトリー、テルメインターナショナルホテル
  6西部配水池、札幌厚生病院
  7札幌芸術の森アートホール
  8真駒内配水池
伊藤組創業100周年記念事業推進委員会編『伊藤組百年史』平10
1 JVも含む。

表-29 岩田建設の工事実績
工事名
昭46伏古川排水区下水道、真駒内選手村第7工区、厚別処理場、第二札信ビル、日本交通札幌アパート
 47札樽自動車道宮の沢工区、札幌新道第6工区、琴似公務員宿舎
 48高速電車東札幌駅他、札幌新道豊水橋、北野団地、茨戸排水区第6工区、手稲排水区第3工区、北海学園大学会館、札幌北高等学校
 49環状北大橋、茨戸排水区第2、3工区、豊平川東排水区第1工区、光星団地高層住宅真駒内上町ビル、円山動物園植物館、東芝ビル、道銀東苗穂支店
 50茨戸排水区第3工区、手稲中学校
 51茨戸排水区第1工区、信濃小学校、東札幌6条団地、光星地区高層住宅、手稲高等学校、北電南9条地下変電所、丘珠航空管制部庁舎
 52道央自動車道里塚、茨戸排水区第5工区、福住小学校、雇用促進住宅新川住宅、札幌市交通局東営業所、真駒内緑町高層住宅、北電北営業所
 53札幌新道厚別高架橋、札幌矯正管区庁舎、拓銀もいわ体育館、北電計器検定所、北4条市街地住宅、サンピアザ
 54高速電車大谷地東地区、創成川処理区第3工区、茨戸排水区第6、7工区、栄ヶ丘第一土地区画整理事業道路、伏古小学校、ニチイ藻岩ショッピングセンター、北海学園大学ゼミ棟、光星地区高層住宅、オンワード樫山ビル
 55南稜高等学校、中島公園子供の国食堂、啓北商業高等学校、篠路中央病院、北海道神宮、羊ヶ丘病院、道銀月寒支店、屯田中学校、光星地区高層住宅
 56北海学園清田グランド、札幌インターチェンジ高架橋、茨戸福移橋、豊平川処理区第2工区、定山渓道道付替4号橋、茨戸排水区、北海高等学校体育館、下野幌地区中学校、札幌市青少年科学館、白石脳神経外科病院、中央区民センタ
岩田建設『岩田建設60年小史』昭58
1 原資料の記述が完工時か否か不明だったので、第1期、第2期などと続いているものは、最終工事の記述のある年にまとめて記載した。

 資本金順の三番目は田中組である。伊藤組の番頭田中銀次郎が創業者で、土木・建築比はほぼ半々であった(札幌の一〇〇社 総合建設業編 昭53)。四十六年には札幌市医師会館、柏丘甲団地、オリンピック関連第四住宅、光星地区店舗併用住宅・公設市場、四十七年は北海道通信社ビル、ライラックビル、四十八年は中の島クロスハイツ、木の花スカイハイツ、真駒内南町団地、四十九年は光星団地道営高層住宅、五十年は東札幌六条団地、光星団地高層住宅、高速電車東西線などがあった(田中組社史編纂委員会編 風雪の年輪 昭53)。
 資本金順の四番目は丸彦渡辺建設である。同社は戦前の富士製紙の仕事を請け負ったことから始まる企業で、戦後も王子製紙など製紙会社の関係工事を担当していたが、高度成長期に業績を伸ばし、四十九年以降完工高道内首位の地位にいる。このころの土木・建築比は四対六であった(札幌の一〇〇社 総合建設業編 昭53)。主な工事をあげると、北一一条市街地住宅(東区役所)、高速電車南郷通駅(南郷一三丁目駅)、シャンポール植物園、西陵高等学校、第一ハイム亜庭マンション(昭和五十二、五十三年)、新琴似地区小学校、南区民センター(五十四年)、高速電車南郷通一六丁目工区、西野第二小学校、シャンポール大通第二(五十六年)、新琴似団地、八軒地区中学校、南二条市民ギャラリー東地区会館、新札幌プリンスハイツ(五十七年)、陵北中学校(五十八年)、高速電車出入車庫、里塚斎場、信濃北地区小学校、創成川処理区Ⅳ―3000下水道(五十九年)、雇用促進住宅桜台宿舎、札苗小学校(六十年)などであった(丸彦渡辺建設社史編纂委員会 丸彦渡辺建設八十年史 平11)。
 上記以外の資本金順ベスト一〇企業につき簡単にその特徴を述べておきたい。表26の五番目住石扶桑工業は、住友石炭鉱業の子会社からはじまった企業で、土木部門を得意とするが、その割に民需が過半をしめることが特徴である。六番目の北炭建設も北海道炭砿汽船から分離・独立した企業で、この時期には北炭離れを果たし土木を建築が上回るようになっている。七番目の北海道機械開発は、市史5上でふれたように建設機械リースを目的として建設業界、機械メーカーなどの共同出資によりできた企業で、大型工事の施工も行っているものである。八番目の渥美工業は、軽量コンクリートブロック製造からはじまった企業で、放射線防護、防音、断熱フロアなどに優れた技術をもっている。工事は下請発注が中心である。九番目新太平洋建設は、大正期創業の建設会社が、戦後北拓建設と改め、さらに太平洋炭礦に経営権を委ね社名変更となり、さらに四十八年には三井建設が七〇パーセントの株をもつにいたっている。土木比重が高い企業である。一〇番目の勇建設は、菅原組出身の創業者が戦後設立した企業で、港土木を得意としていた(札幌の一〇〇社 総合建設業編 昭53)。四十六年には錢高組の下請として地下鉄南北線中の島工区を担当している。社史には、地下鉄工事の声がかかったときの驚きと施工過程の緊張がよく描かれている(勇建設二十年のあゆみ編集委員会 二十年のあゆみ 昭51)。