扇状地周縁の地形

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岩木火山に展開する火山麓扇状地は半径六キロメートルほどの円弧内に存在し、外側には丘陵が環状に分布している。東側の丘陵は幅約一キロメートルと狭いが、黄金(こがね)山(一六八メートル)、高長根(たかながね)山(一七二メートル)、杉沢森(一四八メートル)などが連なり弧状の配置をなしている。基盤岩を覆う黄金山層など第四系からなり、特に先岩木火山火山活動による噴出物も堆積している。
 北側の丘陵は五キロメートル以上の幅をもち、北麓の火山麓扇状地とほぼ同じ高度を保っているが、鳴沢川長前川湯舟川鍋川などの浸食谷によって大きく開析され起伏に富むことから、谷間丘陵として存在している。この北側の丘陵岩屑なだれ堆積物から構成され、鯵ヶ沢町大字湯舟町の東方に位置する三角点(八八メートル)は岩屑なだれによる流れ山(8)であって、近くには古代の製鉄遺構などが検出された杢沢(もくさわ)遺跡が位置している(青森県教育委員会、一九九〇)。したがって、丘陵に位置する同町大字建石(たていし)町および山田野(やまだの)地区などに存在する小丘も流れ山の可能性がある。なお、鳴沢川以西の津軽樹光園農場や鍋川以東の大平野(おおだいの)地区は、丘陵内に分布する火山麓扇状地の延長上にあって、丘陵内でありながら平坦であり、溜め池を有して水田として利用されている。
 また、北東側の十面沢および十腰内付近には御月(おづき)山(二〇二メートル)、伝次森(でんじもり)山(一五一メートル)、大森山(一三七メートル)など数多くの小丘が存在し、先岩木火山噴火活動を象徴する十面沢小丘群をなしている(塩原・岩木山団研、一九八〇)。小丘群は比高一〇〇メートル以下、直径五〇〇メートル以下の円錐形~楕円形をなし、輝石安山岩質溶岩からなる(写真14)。裾野部分は古岩木火山の崩壊物である岩屑なだれ堆積物で覆われ、大森・十腰内・三日月開拓・夕日ヶ丘開拓などでも岩屑なだれ堆積物がみられ、堆積面上に各集落が位置している(口絵・写真15右)。

写真14 十面沢小丘群のある北東方の丘陵(赤倉沢から望む)


写真15 岩屑なだれ堆積物
右:十面沢北方の夕日ヶ丘は岩屑なだれ堆積面上にある。

 一方、南麓の松代面に相当する枯木平・根ノ山・森山南方などは、半径約六キロメートルの円弧外に位置している。南麓に存在する湯ノ沢断層(活断層研究会、一九九一)の存在で、この地区の松代面は火山麓の傾斜面とは逆の、北側への緩やかな傾斜を示し、境界部が地形的に凹地をなし、低湿地となっている。岳南西方の常盤野地区も扇状地性の低地帯であって、南縁の丘陵とは断層崖で接し崖下に低湿地が認められる(写真15左)。火山体を南流してきた湯ノ沢断層付近でほぼ直角に流路を変え東側へ流れていることも特徴的である(鈴木、一九七二)。なお、西麓に分布する岩屑なだれ堆積面の末端は中村川への急な段丘崖であって、崖下には断続的ながら二~三段の河成段丘が分布している。全体的に小規模で、特に中位段丘に相当する面の発達が良好である。

左:湯段南方の丘陵では岩木火山側へ逆傾斜する堆積物となっている。

 日本海に面した屏風山地域から丘陵の周縁にかけては中位段丘に相当する山田野段丘が分布し、鳴沢川河口において中位段丘の指標である洞爺テフラを確認している(写真16)。また、弘前市北西方の独狐(とっこ)付近から鬼沢(おにざわ)を経て廻堰(まわりぜき)大溜池南縁までは丘陵および中位段丘の前縁に火砕流堆積物堆積している。この火砕流十和田カルデラ(湖)を形成する噴火活動によるもので、小谷を埋積しながら平野南部から連続した火砕流台地を形成している(山口、一九九三)。

写真16 洞爺テフラ(中央の白色部分)と直下の古砂丘砂