『善光寺道名所図会』の構成

 5巻5冊からなる『善光寺道名所図会』は、中山道洗馬宿から善光寺道を各宿駅を経て善光寺に至ります。さらに善光寺から北国街道を江戸に向い、碓氷峠に至る間の各宿駅ごとに名所古蹟がまとめられています。
 その道筋を追うと、洗馬宿から郷原宿村井宿を経て松本に入り、同城下内外の寺社古蹟をめぐります。善光寺道からそれて、松本から糸魚川街道(千国道)を安曇郡穂高神社から大町にすすみ、仁科三湖・佐野の里まで行きます。
 松本にもどって、善光寺道を岡田・苅谷原・会田、立峠を越えて乱橋・法橋を過ぎ、青柳宿麻績宿から猿が馬場峠を下って更級郡に入り稲荷山宿に至ります。
 さらに、稲荷山宿から八幡宮・銕捨山を探訪し、篠ノ井から分かれて、久米路橋・牧之島城跡を訪ねて善光寺に入ります。善光寺如来に関する伝承をはじめ縁起の詳細を記し、善光寺でおこなわれて来た年中行事や関係の寺社その他の名所古蹟を見聞記録しています。
 善光寺から飯縄原を経て戸隠山に入り、中院・宝光院・奥院の古蹟や祭礼のようすを見聞記録しています。
 ついで善光寺を発して丹波島宿から川中島に出て、松代城下の寺社を訪ねて屋代宿に進み、この宿の山王社の祭事を探訪し、下戸倉宿坂木宿を経て鼠宿から小県郡にうつります。まず、別所温泉に行き、男神岳・女神岳をはじめ、安楽寺・常楽寺の寺塔等を請録し、上田から科野大宮・国分寺を拝し、海野宿で白鳥神社海野平の故事をさぐり、田中から小諸に至ります。ここから分かれて布引山釈尊寺をたずね、浅間岳山を眺め、追分から碓氷峠に登り熊野神社に日本武尊の昔をしのび、ここで筆をとどめています。
 本書の「凡例」によれば、「各地の名所古跡神社仏閣を掲載し、駅ごとに一圏を冠らしめ、行程をも記す」、「中山道は『木曽路名所図会』に譲り、善光寺道の左右3里ほどの名だたる場所を著すが、とくに大社等は、穂高や戸隠のように3里を越るものも載せる」、「神社仏閣の左右はその神鉢本尊の左右を示し、道路の左の方、右の方とは西より東に赴く旅客の左右である」と説明しています。また、「中山道妻籠の橋場より右へ折れて、元善光寺へ参り、塩尻へ出る道程は、後編に譲る」とも記しています。