近世の村が地方制度改革の波にさらされたのは、明治四年(一八七一)四月四日、新政府が戸籍法を発布して以後であった。戸籍法は、全国の民衆を新政府が一人残らず国民として把握し、集中的統合の基礎を作り上げるのを目標としていた。戸籍法は住居地編成主義をとった。区域内にある家屋敷は華士族、平民の別なく何番屋敷と番号が付けられ、その順番によって戸籍簿が作られた。弘前での戸籍編成作業は明治五年三月に小一区から小六区までの戸籍区割りが終わっている。この戸籍は、干支(えと)にちなんで「壬申(じんしん)戸籍」と呼ばれた。戸籍編成に当たり、政府は、数ヵ町村で一区を作り、ここに戸長・副戸長という新しい役人を置き、戸籍簿の作成はじめ戸籍に関する事務を取り扱わせた。

　しかし、この戸長・副戸長の仕事と、従来の村役人－庄屋・名主・年寄との関係が問題となり、政府は明治五年四月九日太政官布告第一一七号を出して、旧来の村役人を廃止して戸長(こちょう)・副戸長と称し、一切の事務を引き継がせた。また、同年十月十日、大蔵省は布達一四六号で、府県の下に大区、その下に小区を置いて、大区に区長、小区に副区長を置き、町村の庄屋・名主・年寄らの村役人をそのまま戸長・副戸長と改称する方針を示した。ただし、大区小区の規模や従来の町村との関係は「土地ノ便宜ニヨリ」として、細部は地方官の裁量に任せた。かくて、大区小区制という、明治初期の旧体制打破を意図する政策が実施された。明治五年三月五日に弘前支庁が決定した弘前の戸籍区は次のとおりである。

このほかに弘前関係で分かっている戸籍区は次のとおりである。