その後開拓使は大蔵省から戸籍表に関して1郡1大区制との指摘を受けた。函館支庁は管轄地全域の大小区制を企画し、明治7年3月、渡島国7郡を7大区とする取調書と後志胆振両国の区画割については札幌本庁に依頼する旨の書面を札幌本庁に送った。この年の2月に本庁管下(石狩後志胆振3国)に大小区を設定し、各支庁に区画設定を勧めていた札幌本庁は、4月、「当方於テ異存無之候間、御見込ノ通御確定相成可然被存候」と函館支庁の企画を了承し、且つ後志胆振の区画は札幌本庁で行う旨回答した。そこで函館支庁は翌5月、渡島国の大小区更正表(表2-26)と管内布令案を添付して、東京出張所に指示を仰いだ。
表2-26 渡島国大小区更正表
1小区 | 2小区 | 3小区 | 4小区 | 5小区 |
松蔭町 常盤町東側 梅枝町 芝居町東側 花谷町 愛宕町 天神町1丁目 仲新町1丁目 富岡町1、2丁目 元町1丁目の内 | 茶屋町 常盤町西側 坂町 片町 船見町東側 天神町2~4丁目 仲新町2丁目 山上町1~4丁目 上新町1丁目 下新町1丁目 神明横町 | 鍛冶町 元新町 駒止町 山背泊町 台町 船見町西側 天神町5、6丁目 仲新町3丁目 山上町5丁目 下新町2丁目 | 会所町 上大工町 南新町 下大工町 青柳町 上汐見町 春日町 下汐見町 相生町 元町1、2丁目 | 谷地頭町 尻沢辺町 住吉町 柳町 浦町 赤石町 蔭町 |
6小区 | 7小区 | 8小区 | 9小区 | 10小区 |
鰪澗町 鰭横町 仲町 神明町 | 弁天町 西浜町 | 大黒町 | 大町 仲浜町 七軒町 喜楽町 | 内澗町 東浜町 |
11小区 | 12小区 | 13小区 | 14小区 | 15小区 |
地蔵町1~3丁目 恵比須町 堀江町 船場町 蓬莱町 亀若町 | 地蔵町4~6丁目 汐止町 蔵前通 | 豊川町 真砂町 船場町 | 龍神町 西川町 大森町 東川町 | 鶴岡町 若松町 高砂町 音羽町 海岸町 富沢町 大縄町 |
16小区 | 17小区 | 18小区 | 19小区 | 20小区 |
亀田村 鍛冶村 神山村 赤川村 | 下湯川村 上湯川村 鷲巣村 深堀村 | 銭亀沢村 石崎村 志苔村 亀尾村 | 石川村 桔梗村 大川村 中島村 | 七重村 飯田村 城山村 藤山村 軍川村 |
21小区 | 22小区 | 以上村数30村 注 青文字は現函館市域の村 | ||
大野村 千代田村 一本木村 文月村 鶴野村 | 市渡村 本郷村 嶺下村 宿野辺村 |
管内布令案 |
今般当管下渡島国亀田郡ヲ始一郡ニ大一区ヲ置、後志胆振両国モ右ニ准シ三ヶ国ニ而拾六郡ヘ大区十六ヲ置、小区六十一ニ区分シ、別紙ノ通更ニ改正候条、此旨布達候事 |
明治七年五月四日 開拓中判官 杉浦誠 (「開公」五七九五) |
東京出張所は6月13日、「大蔵省の意見は戸籍表調査に関することだけでの指摘で、地方制度全般を見通したものでないので、拘泥する必要はなく、市街村邑の形况と人口の疎密により区画するのが筋と思われるので、函館の如き人口稠密なる地方は別に大区を設定し、人口稀少之場所は郡を併せ一大区としても良い」と述べ、札幌本庁と打合せの上「調査有之度、尤モ全道同軌ニ相帰候様致度候」と函館支庁の企画を差し戻した。その上、「速達可致事柄ニ付、自今ハ次官殿ヘ稟議之上御処分有之度此段共申進候也」(「開公」5795)と、いわば函館主導で札幌との間で話をまとめ、事後承認のように開拓次官の決裁を仰いだことに対して、今後は事前に決裁を仰ぐよう指示したのである。
このため、札幌本庁を中心に見直し作業が進められ、明治9年9月、表2-27(幕末以来の函館支庁管轄地を詳記)のような大小区画改定が実施された。やはり東京出張所の指摘の通り1郡1大区制は見直され、人口の疎密を考慮した大区制となっている。大区設定順に札幌本庁中心の色が濃く出ており、本庁のある石狩国が第1、第2大区、次いで西海岸を南下して(第3~13大区)、函館を過ぎて東海岸を北上する形(第17~30大区)をとっている。渡島国は、7年の函館支庁企画では函館を基点にほぼ時計回りで大区を設定していたのが、まったく逆回りに設定されていたのである。また、函館市街は亀田郡と切り放して元のごとく3大区(14、15、16大区)とし、函館市街を除く亀田郡と上磯郡については、小区数は減らし1小区の規模を大きく設定している。後志国の8郡は各4郡ごとに大区を設定し、渡島国津軽郡は17小区もありながら1つの大区のままで、その他の郡も明治7年企画のまま実施された。
表2-27 全道統1大小区画表(明治9年9月改定)
第1大区(石狩国札幌郡)1~6小区 17村と21町
第2大区(石狩国石狩上川樺戸雨竜空知夕張厚田浜益の8郡)1~6小区 20村と11町(上川~夕張の5郡は村落未置)
第3大区(後志国小樽高島の2郡)1~6小区 9村と23町
第4大区(後志国忍路余市の2郡)1~6小区 12村と2町
第5大区(後志国古平美国積丹の2郡)1~6小区 19村と2町
第6大区(後志国古宇岩内の2郡)1~5小区 12村と7町
第7大区(後志国磯谷歌棄寿都島牧の4郡)1~8小区 33村
第8大区(後志国瀬棚太櫓久遠奥尻の4郡)1~4小区 22村
第9大区(渡島国爾志郡)1~4小区 8村
第10大区(渡島国檜山郡)1~9小区 20村と27町
第11大区(渡島南津軽郡)1~17小区 13村と33町
第12大区(渡島国福島郡)1~3小区 6村
第13大区(渡島国上磯郡)1~2小区 17村
第14、15、16大区(渡島国亀田郡 函館市街)各1~5小区 各39町、12町、22町
1小区 | 2小区 | 3小区 | 4小区 | 5小区 | |
14大区 | 松蔭町 常盤町東側 梅枝町 芝居町東側 花谷町 愛宕町 天神町1丁目 仲新町1丁目 富岡町 | 茶屋町 常盤町西側 坂町 芝居町西側 片町 船見町東側 天神町2~4丁目 仲新町2、3丁目 山上町1~4丁目 上新町1丁目 下新町1丁目 神明横町 | 鍛冶町 元新町 駒止町 山背泊町 台町 船見町西側 天神町5、6丁目 仲新町4、5丁目 山上町5丁目 上新町2丁目 下新町2丁目 | 元町 会所町 南新町 上大工町 青柳町 下大工町 春日町 上汐見町 相生町 下汐見町 | 谷地頭町 尻沢辺町 住吉町 柳町 浦町 赤石町 蔭町 |
15大区 | 鰪澗町 鰭横町 仲町 神明町 | 弁天町 西浜町 幸町 | 大黒町 | 大町 仲浜町 | 内澗町 東浜町 |
16大区 | 地蔵町1~3丁目 恵比須町 堀江町 船場町 蓬莱町 亀若町 | 地蔵町4、5丁目 汐止町 蔵前町 宝町 | 鶴岡町 若松町 高砂町 音羽町 海岸町 富沢町 大縄町 | 豊川町 真砂町 | 龍神町 西川町 大森町 東川町 |
第17大区(渡島国亀田郡 除函館市街)1~4小区 29村
1小区 | 2小区 | 3小区 | 4小区 |
亀田村 志苔村 深堀村 鷲巣村 下湯川村 銭亀沢村 上湯川村 石崎村 亀尾村 | 鍛冶村 桔梗村 神山村 大川村 赤川村 中島村 石川村 | 一本木村 大野村 千代田村 本郷村 鶴野村 文月村 | 峠下村 軍川村 市渡村 飯田村 藤山村 七重村 城山村 |
注 青字は現函館市域の村名
第18大区(渡島国茅部郡)1~3小区 17村
第19大区(胆振国山越郡)1~2小区 2村
1小区 | 2小区 |
山越内村 | 長万部村 |
第20大区(胆振国虻田有珠室蘭の3郡)1~6小区 16村と10町 |
第21大区(胆振国幌別白老勇払千歳の4郡)1~6小区 30村 |
第22大区(日高国沙流新冠静内三石の4郡)1~7小区 53村 |
第23大区(日高国浦河様似幌泉の3郡と十勝国広尾当縁最十勝中川河西河東上川の7郡)1~6小区 51村 |
第24大区(釧路国白糠釧路厚岸川上阿寒足寄網尻の7郡)1~7小区 74村と1町 |
第25大区(根室国花咲根室野付標津目梨の5郡)1~4小区 22村と10町 |
第26大区(千島国国後振別択捉紗那蘂取の5郡)1~5小区 15村 |
第27大区(北見国斜里網走常呂紋別の4郡)1~4小区 30村 |
第28大区(北見国枝幸宗谷礼文利尻の4郡)1~4小区 村落未置 |
第29大区(天塩国天塩中川上川苫前の4郡)1~4小区 5村(天塩中川上川の3郡は村落未定) |
第30大区(天塩国留萌増毛の2郡)1~6小区 10村 |
『開事』より |